2019.06.13

『生きているだけで、愛』


2018年11月公開の映画だったが、見逃していたものを、ネット配信で観た。

津名木(菅田将暉)のところに転がり込んできた寧子(趣里)。鬱病の生きにくさを映画で表現する。現代の「生きにくさ」はよくネットなどで語られるが、鬱病の人にとっての困難度は半端ないはずだ。その精神的な困難さを、映像でどう表現するのかというところも困難。バイトの面接が困難だとかはよくある話だが、みんなに優しくされる難しさをよく描いたなと。

ラスト手前のシーンで、寧子も津名木も、いろんなものから解き放たれる。シーンを切り取ったら(文字通り)頭がおかしいだけだが、結局さらけ出してしまうことで苦悩から解き放たれるんだろうな。そうして、停電になれば裸で踊ればいい。

キャリアウーマンとして出てくる安堂の狂気も、見ものである。よく短い映画にこれだけの要素を詰め込んだなと。

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2019.06.06

『戦略型ITマネジャー』


システムストラテジスト的なシステム戦略の教科書と思って読み始めたら、違いましたね。SE〜コンサルタントといった立場の著者が、業務改革を伴うシステムプロジェクトを企画し実行する際に、どういう視点を持ち、何に気をつけながら進めていくかということを書いた本でした。これはこれで、他人の成功を読むだけで身につけることができるので有益なのですけどね。

ここでいう「戦略」とは経営戦略のことを指すのではなく、SEとしてのキャリアアップの戦略と捉えた方が本書のタイトルがすっきりします。著者が勉強してきてよかったなと感じている事項を読むことで、なら自分は何を勉強すべきだなっていうのが見えてくるのではないでしょうか。

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2019.05.29

『しびれる短歌』

人気の歌人である東直子と穂村弘の対談企画。テーマ毎に短歌をピックアップし、そこで述べられていること、東や穂村が感じたことを赤裸々に語る形式。こういう赤裸々に語ることができるのが、東や穂村の人気が高い秘密だろう。

作歌における感情の出し方とか、色の付け具合とか、そういう感触的な部分をどれくらい盛ればいいのかを学ぶのにいいのではないだろうか。

軽い気持ちで短歌を味わうのにいいアンソロジーでもある。


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2019.05.28

『百人一首』ビギナーズクラシック 日本の古典

短歌を勉強したいのならまず百人一首だろうと、世に数多ある百人一首解説本のなかで、Kindleで読みやすそうなのを選択。

百人一首には恋の歌も多数あり、後朝の歌などもあることから子供向けの解説書ではどうしても内容が不足するため、大人向けの解説書が望ましい。だいたい通い婚の風習がない令和の時代にあって後朝を詠まれても、解説が不足していると何を書かれているかわからないわけだし。

百人一首って古い和歌だよねという感触しかなかったのですが、収載されている和歌は天智天皇から順徳天皇まで、詠まれている時代は非常に長い。大化の改新(飛鳥時代)のあたりから、承久の乱(鎌倉時代)あたりまでだから、日本史の半分くらいはカバーしているんじゃないかな?

和歌の歴史を幅広く押さえている点、ジャンルも恋愛、政争、季節の風景など幅広く取り扱っている点で、きっと短歌の練習素材として相当優秀なんだろうと思う。しかも、短歌を詠む人の認知度も格段に高いことから、話題の共通認識としても本歌取り素材としても有能であることが想像できる。

これは、何度か読み返して覚えておきたいものだ。

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2019.05.27

『Who Was Albert Einstein?』

アインシュタインについての児童向け伝記。英語リーディングの素材としてKindleにダウンロードしました。

このシリーズ全般に言えることだが、英語は平易。たぶんTOEIC受ける分にはレベルを上げて難しい本を読むよりも、このレベルの本を数多く読んだ方がいいように思う。(ただ、飽きてくるのが残念だが。)

本書は
・奇異な幼少時代
・天才的な青年期
・後年は反戦運動
という構成。明確にこの3つが区切られており、その中間段階の記述が少ないことが物足りない。でも、僕が子供の頃に読んでいた伝記ものも、だいたいこんな感じだったのかなぁ。

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2019.05.26

『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』

社会科の予備校講師が経済学古典・定番書を多読してみたという企画である。

ちなみに50冊とは、
『国富論』スミス、『人口論』マルサス、『経済学および課税の理論』リカード、『経済表』ケネー、『雇用・利子および貨幣の一般理論』ケインズ、『経済学の国民的体系』リスト、『純粋経済学要論』ワルラス、『経済学』サミュエルソン、『統治二論』ロック、『経営行動』サイモン、『財政理論』ブキャナン、『セイラー教授の行動経済学入門』セイラー、『マクロ経済学入門編』マンキュー、『隷従への道』ハイエク、『経済発展の理論』シュンペーター、『資本主義と自由』フリードマン、『クリーグマン教授の経済学入門』クルーグマン、『入門経済学』スティグリッツ、『企業とは何か』ドラッカー、『ナッシュは何を見たか-純粋数学とゲーム理論-』ナッシュ、『波乱の時代』グリーンスパン、『リスク・不確実性および利潤』ナイト、『社会的選択と個人的評価』アロー、『人的資本』ベッカー、『正義論』ロールズ、『自動車の社会的費用』宇沢弘文、『プレテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ウェーバー、『資本論』マルクス、『狂気とバブル』マッケイ、『アニマススピリット』アカロフ/シラー、『21世紀の資本』ピケティ、『経済学原論』マーシャル、『コンドラチェフ経済道学の世界』岡田光正、『大転換』ポランニー、『有閑階級の理論』ヴェブレン、『帝国主義論』レーニン、『経済学の本質と意義』ロビンズ、『動態経済学序説』ハロッド、『近代世界システム』ウォーラーステイン、『ゆたかな社会』ガルブレイス、『消費社会の神話と構造』ボードリヤール、『ムハマド・ユヌス自伝』ユヌス、『貧困の克服』セン、『大脱出』ディートン、『経済学原論』ミル、『ゼロ・サム社会』サロー、『ソロスの錬金術』ソロス、『厚生経済学』ビグー、『貧乏物語』河上肇、『隷属なき道』ブレグマン
の50冊。
こうやって一気にパンチしても、もう本文での紹介内容を覚えていないものが結構あったり^^;

本書の楽しみ方としては、多読の感想を楽しむというのがいい。著者「多読ほんとうにキツイ、たいへん」僕(そりゃそうだろ!)というノリで。それでも、この本って名著って言われているけどぶっちゃけこうだよ的な感想もあり、経済学の大家に親近感を感じるものいいですね。

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2019.05.23

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

戦後の東ドイツを描いた映画。1956年の東ドイツの進学校の高校3年生。昭和31年にしては裕福な生活をしているように映像は作られている。労働者階級の子弟もいるが、高校生活を楽しんでいる。ビールもタバコも堂々と描かれているのは、欧米と日本の違いなのか、時代の違いなのか。

ソ連軍の駐留に息苦しさを感じ、共産主義の社会に堅苦しさを感じている。そんななか、彼らがやったことは3つ。
・西ベルリンで映画を観る
・米軍のラジオを聴く
・ハンガリー動乱犠牲者に黙祷を捧げる

どれも、現代からしたら取るに足らないこと。でも、これらがクラスメイトとその家族の人生を大きく変えてしまうことになる。

共産主義の抑圧とはどういったものだったのか。先日観た「芳華」も、この「僕たちは〜」も、共産主義に抑圧される青春という構図は同じ。しかも、反革命を徹底して叩き、革命同志の繋がりが非常に重要視される。大人たちは革命の仕組みの中でキチンと従って生きていくことを是としている。変じゃね?って思う若者は考えるための情報から遮断されている。

この共産主義の抑圧は遥か遠い昔で起こっていることに感じるが、東ドイツは1990年(映画の主人公たちが52歳)まで存在したし、中国や北朝鮮は現在も共産党独裁だ。(程度の差はあるだろうが。)でも冷戦終了から20年経つことは大きいのだろう。冷戦下の東側を、どんな人たちがどう描くのか。

木曜午前の上映で観たが、観客のほとんどはシニアだった。団塊、全共闘世代なのだろうか。アナーキーだった若い頃を思い出しに観に来たか?とか思ってしまった。


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2019.04.30

『FACTFULNESS』

世界の人々の衛生状態や経済状況がどのようなものか、わかりやすいデータを用いながら説明してくれる本です。

正直、先進国以外の地域では衛生状態はひどく、過酷な生存競争を強いられているのだと思ってました。たぶん小学校の地理の授業や「100人の村」あたりの知識から時計が進んでなかったようです。これは先進国の他のいろんなアンケートでも同じようで、各質問はランダムよりも(チンパンジーが選ぶよりも)悪い結果になるありさま。本当は、発展途上国の衛生状態は僕が思ってるより格段に良く、経済状態もいいのです。たぶん、発展途上国の「ふつう」は、私の父母が生まれた戦後くらいのレベルには達してるのではないかと思います。

世界の現状に関する知識をアップデートしてくれる良書。たまにはこういうアップデートが必要です。

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『東京貧困女子 彼女たちはなぜ躓いたのか』


貧困生活を送る女性へのインタビューを書籍に構成したもの。本は東洋経済ONLINEの1コーナーのWeb記事である。

イメージ的には、SPA!がよくやってるキワモノ生活記事みたいなものである。経済誌である東洋経済がなぜこんなゲスいネタに手を出したのかはなぜか。Web記事はキャッチーなタイトルでページビューを稼ぐことが望まれるので、経済誌と言えども背に腹はかえられぬか。

で、内容。シングルマザーだったり介護離職だったり精神疾患だったりで正規雇用から外れ非正規雇用の不安定な生活になってしまっている女性たちの現状を描く。こういう弱者が放置されるような社会でないと思ってたのに、現実はこれか。

本書は女性という縛りで取材をしているが、女性特有の事情は
・シングルマザー→貧困の道の罠
・風俗という罠
・親の介護という罠
・教育投資効果が低く見られる罠
あたりだろうか。本書の前半は貧困で風俗の仕事を始め精神状態を悪くしてさらに貧困という目も当てられない事例が語られて、つらい。

本書で熱く語られるのが、教育である。特に貸付型の奨学金を敵視している。アメリカほどではないが、日本でも奨学金の返済が重くなる事例が増えてくるんだろうか。そこそこの大学を出ても運良く正規雇用の道に進めるとは限らないのだし、厳しい世の中である。ただ、奨学金のリスケと社会福祉制度は理解しとくことで何とかなるかもしれない。

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2019.04.27

『芳華』


中国の文化革命期の軍歌謡団の団員の青春群像劇。一言で言うと、これだけである。

70年代中国に似つかわしくない美しい青春描写。団員のイジメや出自に関わる話をスパイスとして取り入れながらも、ただ美しく青春描画を流す。ダンス、プール、女子寮。文革という暗い時代を匂わせながらも、映像は美しい。

軍の規律を練習や公演に取り入れることで、中盤シーンにつなげていく。

中盤の展開からの終盤。群像に表れる微妙な人生に重さを与える。

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