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2006.03.20

『ITにお金を使うのは、もうおやめなさい』

やや挑発的なタイトルの本です。

・ITはコモディティ化する
・先端IT投資を莫大な投資をかけて行っても、遥かに安価に模倣される
・ITで成功した企業は、最先端のITを使ったからでなく、戦略にITを結びつけたから成功した
といったあたりが主論でしょうか。

帯についている「ITでは、革新は起こせない!」に、共感するところがあります。運輸なら運輸、小売なら小売の本業のあり方で企業力を高めていくのが経営であり、安易にITを導入したから劇的に企業がよくなることはめったにありません。ITは事業の基盤でしかなく、それだけで事業の問題を解決することはありませんから。

本を読んで面白かったのが、過去の欧米の大企業に「電力担当副社長」なんて役職があったこと。現在のCIO(情報技術担当役員)に相当する役職です。ITが電気・水道・ガス・電話と同じような「当たり前」のインフラとなったとき、「昔はCIOなんて役職もあったんだよ」と面白がることになるのでしょうか。

この本を読んでいても、ITに金を使わない理由を見出すことはできませんでした。ITへの投資が競争優位を見出すものではなくても、ITへの投資を怠ると競争の土俵に乗れなくなるのではという疑問は残ります。(電気の動力を使わず蒸気機関を工場の動力に使い続けた工場は、競争に敗れます。) 深く読めば、土俵に残るだけのIT投資はやっときなさいと書いてあるのかも知れません。IT投資によってひとつ頭抜け出す幻想には囚われるなということでしょうか。

僕が社会人になったのが1995年、情報システムの仕事に携わり始めたのが1998年です。この頃、情報システムが「OA化」から「IT戦略」に舵を変え始めたように感じます。ネットバブルが加熱し、最先端IT導入企業が雑誌などで礼讃され、その頃身近にいた一部の経営の人たちも「IT、IT」と常に口にしていました。その頃にぜひとも呼んでいたかった本です。(もっとも、ITバブルがはじけた最近に出版された本ですが…)

この本のタイトルの裏側には、「ITにもっと頭を使いましょう」という思惑が入っているように思えます。

ITにお金を使うのは、もうおやめなさい / ニコラス・G.カー著 清川 幸美訳 / ランダムハウス講談社 / ISBN : 4-270-00062-7

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