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2011.03.29

福島第一原発の状況悪化で周辺の人々が不便を強いられています。当事者である東京電力は今は事態の収束に全力ですが、今後は不便を強いられた人への賠償問題も生じるはずです。

素人ながら東京電力の貸借対照表を読んで、東京電力にどれだけの賠償能力があるのか考えてみました。手元に用意したのは平成22年度第3四半期の四半期報告書に掲載されている平成22年12月31日の連結貸借対照表です。

でもまあわからないことだらけなので、簡単な仮定を。
原子力発電設備資産は、福島第一が古いことを考慮し、簿価を福島第一:福島第二:柏崎刈羽=1:2:2とします。
また、地震後に受けた緊急融資2兆円の内容は、社債償還0.5兆円、当面経費(福島第一原発停止対応と被災火力修復)0.5兆円、火力新設1兆円とします。

貸借対照表の純資産は2.98兆円です。固定資産のうち原子力発電設備は0.85兆円計上されており、このうち0.51兆円と仮定した福島第一と福島第二が設備廃棄で償却することになりそうです。また、当面の費用と仮定した0.5兆円も考えると、純資産は2.98-0.51-0.5=1.97兆円に推移すると想定できます。意外と、びくともしない財務体質に驚きます。(実は固定資産では発電設備よりも送電・配電設備の方が大きく計上されているのが一因です。)

さて、東京電力にどれだけの賠償能力があるか、です。純資産1.97兆円と同額の賠償で債務超過ギリギリのライン。会社の体裁を保って賠償する限度額です。

では、国有化などの倒産を伴う整理を行った場合の賠償余力はどれだけでしょうか。

こうした場合の賠償原資は、純資産1.97兆円に加え社債4.0兆円(貸借対照表の4.5兆円-緊急融資での償還0.5兆円)と長期借入金3.57兆円(貸借対照表の1.57兆円+緊急融資2.0兆円)を合計した9.54兆円の余力があることになります。(短期借入金+買掛金0.65兆円は履行するものとしましょう) しかし本当にこの資金を吐いてしまうと、銀行が大痛手を負うほか、公共債などで運用している年金資産なども大打撃です。東京電力を潰すことによる国民負担も非常に大きいのです。

9.54兆円を超す賠償は、国家負担=国民負担です。(なお、東京電力の現預金は1.87兆円であり、それ以上のお金は国有化時の帳簿のマジックで出てくるもので、原資は税金か国債か郵貯です。)

さて、○兆円なんて金額を並べてみましたが、本当の賠償金額なんて想定できません。避難を強いられた周辺住民への補償、出荷停止になった農産物、放射性ヨウ素やプルトニウム汚染の除去などなど…。それでも、電力供給不足による経済停滞(こちらのほうが圧倒的に被害額が大きいでしょう)に関しては補償対象外なので、意外と純資産の範囲内で会社を潰さずに補償できちゃえるのでしょうか。

ただ、この範囲で補償できるのは福島第一原発がこのまま収束したらです。状況がこれ以上悪化して、例えば周辺30km以内居住不可なんて事態になると、あっという間に数兆円なんてお金は飛んでしまうことでしょう。

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