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2013.12.05

『星々の舟』

まとまりを失ってしまった家族・水島家の、それぞれの立場からの家族を描いた小説です。

章ごとに視点が変えられていくのですが、重いものに重いものを重ねて、読み進めづらく構成されています。軽い恋愛もののイメージだった村山由佳のイメージで読み始めたので、かなり意外な展開でした。

多少ネタバレを含みつつ感想を書きます。

最初は、家で少年だった青年の物語から始まります。けっきょく自分で幸せな家庭を築き上げることができなかった青年。主因が父との確執であるとの印象を持たせてこの章を終えます。しかし、他の章でもっと重いことが告白され、それでもやはり父の頑固で自分勝手な正確が主因である印象のまま物語が進みます。最終章で、父の戦争体験が語られます。水島家のそれぞれの家族の重さよりも遥かに重い体験が語られます。

戦地における新兵教育、占領地政策、従軍慰安婦政策。このあたりは(真偽は係争中ではあるものの)教科書的な、遠いところのできこととしかわれわれは感じることができません。しかし、実際にその場にいて、殺す側・殺される側、虐待する側・虐待される側という生身の人間に触れ、しかも自分もその当事者となってしまった人間にとっては、そんな甘いものではない、重いものだという表現です。この表現が、小説の後半にズシンとやってきました。

政治というのが、ほんとうに多くの人間の人生をいとも簡単に変えてしまう、しかも後生の人生観にまで大きく影響してしまうのだと考えさせられる作品でした。


(2003年直木賞受賞作)

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