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2018.09.23

『小売再生ーリアル店舗はメディアになる』


Amazonが小売業の利益を掻っ攫っている状況の中、実店舗の小売業の生き残り方を説く本です。

Amazonは小売業どころか、ネットの世界すら征服にかかっている(例えば、消費者は欲しい承認をGoogleではなくAmazonで検索するようになっている)が、ここではAmazonに対応できるよう実店舗がどのように変革すべきかという課題。

実店舗は、土地や建物を含め店舗設備に大きな資金を投じています。なので投資回収の効率が経営の関心であり、一般的に「売り場面積当たり売上高」で評価されることが多い。というか、それしかない。それを「これが顧客の体験を進化させるうえで大きな阻害要因になっている」と看破します。なかなか難しい観点です。小売業は製品を顧客に体験し購買に結びつけるという視点で捉えた「商品」起点で考えるか、小売スペースに顧客を呼ぶために品揃えをする「場所」起点で考えるかという、根本の考え方の違いのような気もします。対Amazonということであれば、商品起点で顧客の体験を収益化する視点の方がストーリーとして断然に面白いのは確かなのですが。

小売、特に非日常の小売においては販売員の質も大きく関わってきます。人間対応してもらう必要のないものはネットで注文して宅配してもらえば済むという話になれば、売っている場所に行くのは専門知識を有していて気が利く販売員の有無が大きな要素になるのは当然の流れなんでしょう。本書では、現在の小売業の販売員をこき下ろしています。アメリカのデバートの販売員の質はそんなに低いんでしょうか。筆者が日本のデパートの販売員を見たときに、アメリカと同様に思うか、日本は顧客に体験を提供していると考えるかは知りたいものです。

体験の話を読んでいると、一時期「ショールーミング」という言葉が流行ったことを思い出します。(今でもあるのかな?)実店舗で商品を目で見て、ネットショッピングで注文してしまう現象です。このショールーミングそのものを収益化することが実店舗の課題に思えます。物の売り方にイノベーションが必要なので、一部の先進的な商品のみの成功体験が本書で紹介されているものの、汎用的な小売に適用するのは難しいでしょう。例えば、Apple StoreでMacBookを顧客に体験させてネットで購買させるのは現実的ですが、コンセプトストアで大学ノートを体験させてネット購買を期待するのは現状では難しいのではないでしょうか。

一部のアーリーアダプター向けの商売でなく、マジョリティ向けにコンセプトストアが成立する日も来るのかとは思いますが、もう少し時間がかかりそうな気がします。それまでの間、土地や建物を有している小売業がその店舗資産を最大限に活かすためにすべきことは何か、本書の内容も気にしながら探っていかなければならないのでしょう。

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