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2019.02.19

『ちいさな独裁者』



脱走した上等兵が偶然に士官の制服を得て大尉を名乗り生き延びてゆくストーリー。

この映画を観て、大きな二つの要素を感じた。

まず一つは、外見(この場合は制服)が権威付けに非常に重要であること。現代社会は随分とリベラルになったが、大戦時の軍隊においては階級が非常に大切であり、たかが制服(の徽章)でこれだけ大切な事柄を決めてしまう力を持ってしまうんだと。

二つめが、戦争の非常事態性。ヘロルトは逃げ延びる手段を得たいだけなのに、大尉になりすますことで大尉になりきるしか生き延びる方法がなくなってしまっている。そして自分が生き延びるために大量虐殺をせざるを得ない状況に追い込まれている。自分自身が脱走兵にもかかわらず、大量の脱走兵を即決裁判で処刑してしまうなど、観ていて気持ち悪くなる。平時での仮定の役割が暴力に発展してしまう『[エス]』(スタンフォード監獄実験)などの事例すらあるので、戦時ならあり得るのかと思ってしまうことこそ異常なのかもしれない。

後半で踊り子が歌う「春に5月は一度しか来ない」をヘラルドがどう聴いていたか。いつかは破滅がくる大尉生活をビクビクしながら聴いていたことだろう。

ロケ隊が現代の街頭で憲兵による略奪を演じるエンディングが、この映画の気持ち悪さを増幅させて終わる。

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