カテゴリー「書評」の552件の記事

2020.03.16

『みずほ銀行システム統合 苦闘の19年史』


永遠に終わらないかと思っていたみずほ銀行のシステム統合とシステム更新。もう名物案件化してましたね。SEが「青いところに足を踏み入れちゃった」と自嘲気味に話してたり。

昨年、ようやく長いプロジェクトが完了した。日経コンピュータでも大々的に取り上げられ、日本のIT業界の一区切りが付いたなと感慨深いものです。もはや「第一勧業銀行」「富士銀行」「日本興業銀行」なんてみんな忘れ去ってしまっただろうし。

本書は、こんな長いプロジェクトの中で発生した2度の大規模システム障害から銀行の体制を遡り、経営におけるシステム軽視の危険性を説くものです。

日経コンピュータはみずほを敵視するような書きっぷりをすることがあり、本書も相当激しく糾弾するかなと思ってたら、意外にも穏やかな表現です。現場の技術者たちへの遠慮が感じられる。経営体制の批判はしますが、批判対象の経営陣はすでに一線を退いてますし。


そんなわけで、比較的淡々とかかれています。技術的にも19年間の今となっては過去の技術な訳だし。でも、基幹系と言われるようなシステム更新を企むことがあれば、きちんと本書を読み直して轍としたいですね。

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2020.02.28

『ハッピー★アイスクリーム』


雑誌『ねむらない樹』で短歌が掲載されていて気になった歌人、加藤千恵。さっそく調べて、歌集をKindleで購入しました。

歌集だと思って開くと、短編小説集だった。ローティーン向けの軽い恋愛小説に、鋭いアクセントとして短歌が差し込まれている。青春臭い加藤千恵の短歌が、よりピンクの青春の小説に斬り込んでいくようだ。

全体として、小説は淡く幼い。短歌は青春の奥にある不安を鋭く表現している、大人が描いた子供心のよう。

後半が歌集。あとがきによると、歌集として出版したものに、あとから短編小説を加筆したらしい。幼く感じる小説部分が大人になってからの作品で、鋭く書かれた短歌が高校生の頃に詠まれたもの。この関係が意外。加藤千恵の他の作品を知らないが、短歌を詠んだ高校生時代の気持ちを下敷きに短歌を浮かび上がらせようと、高校生っぽい小説を仕立てたのだろうか。


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2020.02.25

『AWSクラウドの基本と仕組み』


漠然とした認識しか持っていないクラウドサービスについて、具体的なイメージを持つために読みました。大手クラウドサービス事業者の一つ、AWS(Amazon Web Services)の入門書的な本です。

通読して、この本では技術的なことはほとんど書かれていませんでした。サービスの種類と、その特徴(というかオンプレミスと比較しての利点)をメインに書かれています。実際に業務システムでクラウドサービスを使おう!ってなった時にこの本を読んでサービス選択に当たりをつけるための参考本といったところでしょうか。でも、ざっくりとクラウドサービスの全容が掴めるので、取っ掛かりとして重宝しそうな本です。

紙の本が1,980円、Kindle版が990円だったのですが、ほとんどAWSの広告なんだからせめてKindle版くらい無料でばら撒けばいいのに。


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2020.02.02

『ラストレター』

岩井俊二の映画。ファンタジーとノスタルジーが入り混じるテイストは今回もじっくり味わえる。ドローン撮影の導入で映像に美しさが加わったが、手持ちカメラの人間ドラマとドローン撮影の風景の美しさのギャップを埋めることができなかったのではないか。

葬式のシーンから始まり、手紙のやり取りで物語が進展していく。大人(福山雅治と松たか子)のやり取りだが、青春を思い出しながらのやり取り。手紙というアナログのやり取りの重みや味わいをじっくり見せつける映像である。そして、文章を書くことの大切さを語りかけるストーリー。福山雅治(S44生)、松たか子(S52生)という団塊ジュニア前後のキャストにこういう物語をぶつけてきて、僕たちの青春は紙に文字だったなと思い起こさせる。もはや、手書き文字こそ青春。

青春を振り返って、結局は自分って小さいと感じる。それを認めたくない不健全な大人になるか、小さくまとまって社会適合するのか。阿藤(豊川悦司)の不健全な生き方に憧れる中年もいるのではないか。

『美咲』が読みたい。


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2020.01.19

『達人に学ぶDB設計徹底指南書』


データベーススペシャリスト試験を受験するにあたり、試験対策書だけでなく関係方データベースの理論と実務も学びたいと読んだ本です。

概念スキーマ、内部スキーマ、正規化、ER図と、データベーススペシャリストの午後試験対策で学んでおかなければいけないことを、システム構築実務に近い視点で学ぶことができました。試験対策のベースにもなってくれていればと思います。

後半は、パフォーマンス関係と、バッドノウハウ。バッドノウハウのほとんどは、正規化の段階で関係演算の理論をきちんと捉えず横着して設計したことによるものなんだろうと感じます。実務でありがちなルール違反を明確に示しているので、データベース設計の際に心しておかないと。この分野は、きちんと設計された状態で出題されるデータベーススペシャリストの午後試験には関係なさそうです。

データベース設計を仕事にしている人は、必ず読んでおいた方がよさそうな本ではないでしょうか。

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2020.01.16

『テロリストのパラソル』

新宿中央公園での爆弾テロ。やたら頭が切れるアル中の男。ヤクザ、浮浪者。いろんな人物を巻き込んでのハードボイルド小説。次々と関連してくる人物が、たまたま過去に繋がりのあった人物が連続し、そんなご都合がよいことが!と突っ込みたくなるストーリーですが、最終的には「そことそこが繋がっていたのか!」と膝を叩くようなストーリーで終わっています。

いちいち話のスケールが大きく、娯楽小説として楽しめるのではないでしょうか。しかし、全共闘やらヤクザやら、やや重いのも事実。特に小説の根底には全共闘が社会を斜に構えて見ている視点と青春が混じり合った生臭さがあるので、特にセクトと接点を持ったことがある人にはズシリと来ると思います。

1995年出版の本ということで、当時の新宿西口は今よりも混迷にあったと思う。25年経った新宿からみたら、舞台となった新宿は別世界のようである。

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『パラサイト 半地下の家族』


隣国である韓国の庶民というのがどのような生活をしているのかを知る機会ない。21世紀になって先進国の暮らしをしていると思っているが、現実は知らない。社会の分断を描いたとの評判のこの映画だが、描いているのは現実そのものではなく、作品として象徴的に描いているのだろう。こういう映画の現実との対比を捉えられないまま観ることになるのが残念な作品ではある。

実際に、韓国の集合住宅には映画に出てくるような半地下住居が存在するのだろうか。通りの酔っ払いの立ち小便をかけられ、半階上がった便所で携帯電話の電波を探るシーンは印象的であり、その画像にアンカリングされた上で物語が進む。

前半は痛快である。いかにも韓流らしいコミカルな喜劇として、成功を収める。この成功には、精緻な計画がある。すなわち、計画通りに事が進むのだ。危うい事があっても計画が達成されるシーンが連続することこそ、この作品の重要な伏線である。

雨の夜のシーン。雑誌などの作品紹介で、山の手の雨が庶民の住む低地に濁流となって流れる、あのシーンである。作品においては、もっと重い気持ちでこのシーンに臨むことになる。階段を降りる、もっと降りる、まだまだ降りる。絶望の中に降りていく象徴的なシーンとなる。

絶望感を観客に十分に味わせて、最後のシーンに移行する。憎悪を消化できないまま、幕が降りる…。

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2020.01.12

プログラマの数学


プログラミングを学ぶための基礎になる数学を少しのユーモアを取り混ぜながら優しく説明した本。優しく説明と言っても高校数学レベルの知識は前提で、その土台を思い出しつつプログラミングの際に気をつけなきゃいけない概念を学ぶようなものです。

論理、帰納、再帰など、SEやプログラマが理解不足のせいで誤った設計やコーディングをしてしまうことは実務でもありがち。当たり前のように見えて勘違いしがちな数学はあちこちに潜んでいるもの。本書の通読で、少しでも落とし穴に気付くことができればと。

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2020.01.10

『対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方』

ビジネススクールの講師に勧められた本。DXを考えるために罫線戦略コースを受講したと伝えたため、この本がリストに上がった可能性が高いかなと。

タイトルの通り、DX(この著書が書かれた時はまだDXという言葉はないが)の進展に対し、領地を侵犯される既存企業はどのように生き残るのか?という課題について述べた本です。前半は、いくつかのデジタルによるビジネスモデル変革の事例が挙げられており、ITストラテジストの論文事例に使えそうな感じ。で、後半は「既存企業」の組織について焦点を当てられます。

既存企業のアジリティ(敏捷性)を高める策を次の3つにまとめています。
情報にもとづく意思決定能力→迅速な実行力→ハイパーアウェアネス(察知力)→情報に…
これら「情報」「迅速」「察知」あたり、なんとなくAIの出番か?と思ってしまうのですが、既存企業のいちばんの強みは厚みのある従業員、そして現場。現場にいる従業員こそがいちばんたくさんの情報に触れており、現場にいる従業員こそが最もたくさんの判断を行なって迅速にアクションを起こしているのです。そうか「デジタル」って何でもかんでもコンピュータのことしか考えるのでなく、ワークフォースの最大活用こそが既存企業の戦い方なのか。

ところで、情報システム部員の私にとって耳の痛い記述があった。「IT部門は、社内で最も変化を嫌う部門になりがちだ。」レガシーなシステムの保守に追われて革新的なビジネスモデルに取り組めていない情報システム部は至る所で悪者にされているのも事実で、DXとか2025年の壁なんてのもその類の批判だ。情報システム部員は心すべし。


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2019.11.13

『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』


漠然としか捉えられずブラックボックスであったAI。結局AIはどんな理屈で動いてるの?という疑問が残ったままでした。ディープラーニングの模式図なんかはWEBや雑誌で見かけるが、だから何なの?と。本書をKindle Unlimitedで見つけた時にそんな感覚を思い出し、しばらく電子積読として温めていました。

情報処理技術者試験が終わったので、ちょい気合を入れて読んでみようかと。1〜4章が数学(微分、ベクトル、行列)、5〜7章が数学知識を使ったAIへの実装の考え方が書かれています。数学の部分は実際に紙に数式を書いて解くことで、高校大学で習った数学の勘を取り戻しながら読み進めました。この手の分野の本は実際に手を動かすことで理解が深まるので、数式を書くことはおすすめです。実践編の5〜7章は流し読みでしたが、直前に手が覚えていることで、どういう方向性の作業を行なっているかの理解ができ、AIってそういうものなのかということが腑に落ちました。

実際にAIを始めるにはこの本ていどの数学知識では足りなさそうですが、AIって何?の疑問を解決するにはちょうどよい本だったと思います。


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