カテゴリー「書評」の502件の記事

2018.10.19

『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』


最近なにかと目につく「GAFA」。Google、Apple、Facebook、Amazonの4社を並べて言う言葉です。このうちApple以外はネット時代の新興企業。この4社が世界を牛耳っている感は、Kindleで本書を読んでiPhoneで感想を書いているこの瞬間にもあります。

さて、なぜこの4社が短期間に世界を牛耳ったか。安い資本を使うことができたからなのか、垂直統合で顧客を知ることができたからなのか。ここは各社いろいろあり、結論として市場の勝者となったということなんでしょう。僕が本書から読み取ったポイントは2点。
・安価に広範な顧客動向を手に入れる手段を持つ
・Aクラスの人材を雇う

まあ、僕が4社の間に割り込む会社を起業するのはあり得ないので、ならAクラス人材になりたい!って夢はあります。しかし、著者もAクラス人材になるために最初の結婚と髪の毛と20代を犠牲にしている。でもそうしないと「300万人の領主と3億人の農奴の国」の300万人側になれないと解きます。そう、GAFAはGEやIBMと違い、ごく僅かな、Aクラスだけの従業員で運営しているんです。ああ、農奴から逃れるための道は険しい。

本書ではところどころジョークを入れて場を和ませています。Facebookについて「離婚届の写真や、木曜日にどれだけ疲れているかを投稿する人はいない」と書かれているが、Twitterではこれらを見せびらかすことがメインだよなあと。なぜFacebookは収益化に成功してTwitterは厳しいままなのか、この辺の視点からも考察してみてもらいたいところです。

「穏健派へのマーケティングは金がかかるわりに効果が薄い」と書かれている。Facebookでの政治的誘導がずっと話題になってるが、効果が高い政治勢力に資源が寄るように仕組みができちゃっているのかもしれない。世間が極端な方向に偏ることが心配だ。

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『絶滅の人類史』

過去数年、人類の進化に関する書籍が増えてきている気がする。化石の研究の整理が進んだのでしょうか。今回はその一冊「絶滅の人類史」を読みました。

人類といっても、様々な種があり、我々ホモ・サピエンスもその一種でしかないということ。この辺は聞いたことあったのですが、随分と色んな種が過去に存在し、繁栄と絶滅をしていたのですね。

様々な人類の中で唯一現生人類が生き残った理由が知能とか生存戦略とかじゃなくて子どもをたくさん産めたからって、そんなもんなん?

人類の系統なども興味深いですが、この本の意外な面白さは、小さな証拠からどういう推測が成り立つかの考証です。化石の状況から過去の人類の生活を推測するのですが、何がわかっていて、何がたまたまい矛盾のない説かということが説いてあること。このへん、ロジカルシンキングの題材になっちゃいそうなネタだなあと本筋に関係ないところで感心してしまいました。

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『世界史の中の戦国日本』


日本では室町時代後期から戦国時代である16世紀における、日本周辺の貿易状況について書かれた本。新書ベースなので読み物かと思って読み始めたら、けっこう資料の解説の部分が多かった。資料から読み取れる隣国関係の記述はあるが、そこからストーリーに展開する流れにはなってない。(後から見ればそこ本の原著が1995年に出版されており、近年の歴史ブームの中での本ではないことがわかったが。)

タイトルに「世界史」とあるが、欧州や中東の記述はそれほどなく、マラッカ、琉球、蝦夷地、朝鮮という日本周辺との貿易が中世から近世への時代の変わり目にどう変化したかに焦点が絞られている。この本から、東アジア貿易の変遷が近世日本経済にどう影響を及ぼしたか、日本の戦乱が東アジア経済にどう影響を及ぼしたかは僕の読解力では理解できない。

それでも石見銀山の銀が東アジア経済に及ぼした影響は興味深かった。急激な日本の銀産出量増大が朝鮮の経済を混乱させ、女真族(満州民族)の蓄財に至った可能性があるなんて思ってもみなかった。金銀レートは幕末まで混乱が続くけど、こういう通貨の関連は方程式にしようにも変数が多すぎてワヤですね。

中世の東アジア貿易体系で非常に重要な役割を担った倭寇も、日本の教科書では単なる海賊集団なような。教科書の記述では軽視していたことが、複数の歴史を繋ぐ中でかなり大切なのだろうし、そういう重要なニッチ部分を知ることができた本ですね。

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2018.10.18

『日々是好日』



基本的に何も起こらず、ただ日が過ぎて行く映画。ここに映画の題目である「日日是好日」が生きてくる。

おっちょこちょいの典子役に黒木華がよく似合う。茶道初心者の失敗あるあるを演じるところから始まるが、失敗を演じるごとに劇場客席後方から年配女性の笑い声が沸き起こる。彼女たちは珍しく茶道の映画ということで習い事仲間で観に来ているのか、表千家で動員がかかっているのか。彼女たちも「最初はそこを失敗するんだよね」と習い始めた頃を思い出しているんだろうか。私自身も大学生の頃に大学茶道部にいて劇中の黒木華と同じ立場を経験しているので、若い頃を懐かしむのに十分だった。

受け身な人生を歩み自分自身を悲観しがちな典子が、環境が与える苦楽こそが好日であり、その苦楽こそが人生の味わいだと感じて行くさまが淡々とスクリーンで描かれる。その積み重ねで、後半にジワっと来るようになっている。序盤の初釜の干支茶碗の下りもうまく作ってある。

映画公開前に助演の樹木希林が亡くなってしまったことで、観客にとって「日日是好日」がより重くなってしまった感があるが、それも含めて日日是好日であり、一期一会であろう。

長々と書いてしまったが、結論としては、黒木華かわいい。

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2018.10.13

「世界は素数でできている」



素数というなんだかつかみどころのない整数から、幅広い数学論に展開させていく読み物です。素数のいろんなことを読むと、意外と数論のことでわかっていないことが多いんだなという感想です。

そんななかで、何がわかっていて何がわかってないのか、それらの問題はどういう歴史を持っているのかという記述が面白いです。たかが素数に、天才たちが叡智を注いできた経緯が。

素数について実用領域で活躍しているRSA暗号も、今までは大きい数の素因数分解に時間がかかることを利用したとしか知らず、ここで仕組みの解説を聞いてそういうことだったのかと感動。

後半のリーマン予想の章は難しすぎて通勤電車の中でKindleで読むのには難しすぎる。ちゃんと読むには紙と鉛筆が必要です。

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2018.10.11

「泣き虫しょったんの奇跡」



奨励会を年齢制限で退会後にアマ参加の公式戦でプロに勝ちまくり、プロ編入試験合格を勝ち取った瀬川晶司(現五段)の自伝の映画化作品。

三段リーグは重く、つらい戦場。ここを自堕落に過ごしたように描かれているのは、瀬川の後悔なのだろうか。実際に怠けていたのか、血の滲むような努力が実らなかった悔しさを表現するすべがなくこうなったのか。奨励会退会後の活躍と比較しての無念もあろう。

三段リーグの閉塞感と、アマチュアの開放感。三段の勝つことだけが目的の将棋と、アマチュアの楽しむための将棋。この対比を味わった棋士はかなり貴重なんじゃないだろうか。将棋はゲームだし楽しむものだけど、勝負ごとなので厳しい。これからはそういう視点を持って将棋観戦ができよう。

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2018.09.28

『現代都市経済学』

ちょっと硬派な本。しかも古い。初版1985年、第2版1995年です。基本、バブル前の状況が書かれていると思っていいでしょう。

都市や繁華街の価値って何?という疑問が生じ、探した本です。本当は商業集積の価値を知りたいのですが、そのような本は見つかりませんでした。

知りたい情報は、序盤に出てくる「ホテリングのモデル」でした。理屈を読んで、あっ、なるほどねと感心しました。たったこれだけの理由で商業集積が生成されるんですね。

商業集積の価値そのものの算定とか資料があればいいんですけど、難しいのでしょうか。

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2018.09.26

『絶対わかる論文問題攻略法』

TOEICの結果待ちとなり次にどうしようかなとネットでIT資格周辺をうろうろしていてKindleUnlimitedで拾った本。IT高度試験の論文試験に臨む心掛けが書かれている本。十数年前(まだ主任職から係長職に昇進したての頃だろう)にPM試験を受験して論文B判定で落ちたっきりIT系試験に手を出していなかったので、この手のがふと気になっていた。

筆者独自の感覚だけで、非常に簡潔に書いてある。筆者自身がすばらしい文章力の持ち主ではないし、並外れた論理的思考の人でもない、ごく普通の人が書く文章を書いていてる。しかも、紹介されている復元論文(試験後に書き起こした合格論文)も、難しいところが何もないというもの。あっ、こんなので受かっちゃうんだ!という驚きな書籍でした。でも、これで論文試験なんて難しくない、ノー対策で合格できるんじゃないかと思う落とし穴にハマりそうな一冊でもあります。聞かれたことに答える、この単純なことに本書は終始しているのですが、これが難しいということに気づかなければいけません。

本書のノリは非常に軽く、まるでライトノベル。「私の高度試験論文が合格論文なワケがない」なんてタイトルで売られていた方がしっくりくるかも。

2時間でプロジェクトをでっち上げて論点を整理して2400字〜3600字の手書き文書を作成しなければいけないのですから、かなり無茶振りな作業なわけですが、いかに横着して要点を抑えるべきかがコツですよってのがわかります。

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2018.09.25

『若おかみは小学生』

児童文学(講談社青い鳥文庫)の小説のアニメ映画化作品。小4の娘に観せようかと誘ったらなぜか中1の息子が食いつき、こども2人を連れて多摩センターまで観に行きました。

事故で両親を亡くした小学生が祖母が営む小さな旅館で後継者として修行をするという少女成長物語。最初に出てきた神社の能舞台での舞は君の名はを思い出すし、田舎の旅館の風情は千と千尋を思い出すしというのはありますが、「頑張る」とか「来る人は拒まない」などの意味が表面だけでなく深く考えることを強要する物語で、なかなか重い。ライバルを敵視するところから徐々に手を差し伸べる仲になる過程など、ストーリーもハラハラとさせるよう仕組まれており、児童文学と舐めてかかってたらだめだ。おっこは挫折からの成長を遂げることができるか、ぜひ作品をご覧になってください。

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2018.09.24

『よるのふくらみ』


衰退する商店街。兄弟たちとの軋轢。親の不誠実。セックスレス。不倫。いろんな感情をてんこ盛りに詰め込んだ小説。重い内容を描いているにも関わらず心理描写が浅く、読み終わって不完全燃焼という感覚になってしまうのが残念。

もう少しテーマを絞って描くべきではなかったか。


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