カテゴリー「書評」の433件の記事

2017.08.16

『経済物理学の発見』


Kindle Unlimited の光文社新書から。夏休みにもう少し読書をしようと思ってたけど、この本だけになっちゃいました。この本も一般的な新書で、読むのにそれほど時間はかかりませんけど。

語感から「経済物理学」を「金融工学」だと思い込んで本書を読み始めたのですが、どうやら別物らしいと途中で気付きました。金融工学は正規分布として金融取引データを取り扱うのに対し、本書の経済物理学では取引データはむしろベキ分布に相似し、カオスやフラクタルを考慮しなくてはいけないと。

統計=正規分布だと教え込まれてきた自分にとっては当初は違和感がありましたが、まあ妥当なんでしょうね。そんなわけで、なかなか収束しない為替相場なんてのも、なるほど納得です。ただ、まだ研究が始まって浅い分野ということもあり、経済政策やブローカーの取引手法に実用化されるまではまだ遠く、これから研究者を増やしたい分野とだと感じます。

「統計学が最強〜」なんて本もありますが、そこに近似されない統計理論があることを本書のような経済物理学解説書で知っておきながら、現実の生活で実用的な統計理論を学んでおくことが大切のように感じます。

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2017.08.03

『外資系コンサルの知的生産術-プロだけが知る「99の心得」』


KindleUnlimitedにあったビジネス系新書です。企画系の仕事を行う際のハウツーと言うか、そういうの。

「コンサル」「知的生産」なんていうとクリティカルシンキング系のフレームワークの使い方あたりかなと思ってしまうのですが、本書はどちらかというと行動の指針をメインに掲げています。

第1章「知的生産の戦略」
第2章「インプット」
第3章「プロセッシング」
第4章「アウトプット」
第5章「知的ストックを厚くする」
という章立てです。

第1章の「戦略」では、これから取り掛かる仕事の「見積」が大事そうだなという感触を受けました。何らかの仕事にリソースの投入量は、成果物の量×成果物の品質なわけです。しかし、スコープ定義も品質定義も意外と難しく、というかIT技術者はそれができないから苦しんでいる部分も多いですよね。やはり、文系のプロジェクトであるコンサルタント業務でも、同じ苦しみがあり、同様に重要視しているということなんでしょうね。

第3章「プロセッシング」の中で、最初からポジションを取ることが大切とありました。たぶん、仮説検証の仮説を最初から明確にすることにより検証の精度を上げる術なのだと思います。直感精読ですね。最初からポジションを取ってしまうことでチーム内でコンフリクトが生じたり、検証の過程で仮説の誤りが判明した際の方向転換の難しさが課題です。この章で「定説に流されて思考停止しない」という提言がありました。これが、なかなか難しい。というのも、定説ってのは誰かがせっかくここまで考えて結論を出してくれた成果物なわけです。定説を使っちゃえば作業をショートカットでき、労力を省くことができちゃうわけです。作業全般において、成果物の特徴を出すために、どの定説だけは再度検証してみようかと当たりを付けるセンスが問われるのだと思います。

第5章の「知的ストックを厚くする」では、結局のところ面白いと思うものを書籍で読み、キチンと要約を考えるということっぽいです。全分野の読書に時間をかけたり、面白くないと思っている分野に時間をかけたりするのは効率が悪いそうです。しかし、経営戦略/マーケティング/財務・会計/組織/リーダーシップ/意思決定/経営全般/経済学/心理学/歴史/哲学/宗教/自然科学/芸術の14分野は各々3冊くらい目を通しておくべきと。いや、これだけでかなりの量ですよね。自分の専門分野以外でこれだけ網羅して42冊を読むなんて…。僕のジャンル分けだと①経営戦略・マーケティング②組織・意思決定③歴史・経済④IT⑤自然科学くらいでいいような気がしますが、コンサルタントなど厚い知識ベースがないと仕事にならない人は大変ですね。

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2017.07.30

『メアリと魔女の花』


スタジオジブリ系のアニメ制作スタジオ「スタジオポノック」の第1作アニメ映画。ポノックの位置付けがよくわからないのですが、スピンオフなんでしょうか?

で、その作品を子ども2人を連れて多摩センターに観に行きました。日曜日朝9時の回はガラガラでした…

作品は、ジブリ的演出が多用されているというか、各シーンごとに「あの作品がモチーフだな」というのが見て取れる演出です。特に「魔女宅」「千と千尋」辺りがデジャブ。

ストーリー自体はよくあるというか、子どもに取っ付きやすいストーリーです。冴えない少女がファンタジー色のある冒険に出て成長する。極端に要約しちゃえばそれだけです。しかし、気を引くアイテム、男女、精緻な脚本、綺麗な絵、丁寧な動画を組み合わせて、感動を呼び、印象に残る作品として楽しむことができました。

残念なのが、目新しいことが盛り込まれていなかったこと。ジブリ作品は毎回何か目新しいコンテンツを盛り込んできて「今回はこう来たか!」という楽しみがありましたが、今回はポノックがジブリの正当な後継者であることを誇示するための作品か?と思っちゃうくらいジブリ要素だけで終わっちゃいましたね。

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2017.07.26

『ユリイカ 2017年7月号 加藤一二三-棋士という人生』

月刊誌『ユリイカ』は詩人に向けた雑誌。文芸誌と言うべきだろうが、少し思想というか哲学というか、そういう色が濃い雑誌。そんな雑誌が「加藤一二三」を特集していたので、つい買ってしまいました。

大棋士であった加藤一二三九段ですが、その言動の「面白さ」故に観る将の勃興とともに有名になった面もあるかと思います。その加藤一二三の人生観を、本人からも他のトップ棋士からも、観戦記者や言論家からも聞き出し、一つの雑誌に仕立て上げたもの。棋書ではなく哲学系文芸誌で取り上げたことで、より加藤九段の将棋観を鋭く追求した仕上がりになっています。

最終的には、一途によい棋譜を追求した人生が描かれ、いろんな言動もまたよい棋譜のためという加藤九段の将棋観として締めくくられたということでしょうか。やはり、伝説の棋士ですね。

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『溺れるナイフ』


菅田将暉・小松菜奈による青春映画。いわゆる「キラキラ映画」な青春映画。菅田将暉が地元の名家の跡継ぎの中学〜高校生を、小松菜奈がモデルをやってる中学〜高校生を演じるという、設定からしてキラキラしている。

映像に溢れる海、山、川、仮面、火祭り。美しい映像のもとで、2人の青春が挫けながら繰り広げられていく。当然、その青春も作られたように美しいわけで、その美しさを味わうだけの2時間です。

この青春が神からの祟りなのか、神の加護なのか。そういう要素を入れながら神秘性を持たせ映像をより美しく見せようとしている演出もなかなか。単にキラキラより、うまく厚みを持たせて作品を仕上げたと感じます。

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2017.07.18

『経済古典は役に立つ』


KindleUnlimitedにあったので、何となく読み始めた本。しかし、意外に奥深かった。

本書で取り上げる「経済古典」は以下の10冊
・アダム・スミス『国富論』(1776)
・マルサス『人口の原理』(1798)
・リカード『経済学および課税の原理』(1817)
・マルクス『資本論』(1867)
・ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』(1936)
・シュムペーター『経済発展の理論』(1912)『資本主義・社会主義・民主主義』(1942)
・フリードマン『資本主義と自由』(1962)
・ハイエク『隷属への道』(1944)
・ワグナー・ブキャナン『赤字財政への政治学』(1979)

いずれも、聞いたことはあるけど読んだことはないなという本ばかりでした。どの本も実際に読むのは難しすぎて、専門家向きだろと思っているものばかりです。
ただ、本書では「古典」を取り上げていると捉えるより、それぞれの経済学者の思想を捉えると考えたほうがいいと思います。書名および発行年は、その時代を明確に示す記号と捉えて読み進めます。時代背景が大切なので、いくつか関係しそうな世界史年表を少し。

1764 多軸紡績機の発明(産業革命)
1776 アメリカ独立宣言
1789 フランス革命
1846 イギリス穀物法廃止
1914-1918 第一次世界大戦
1917 ロシア革命
1929 暗黒の木曜日(世界大恐慌)
1939-1945 第二次世界大戦
(2001-2006 小泉内閣…著者が経済財政政策大臣)

この本で最初の方に強調されて書かれているのが、『偉大な先達が、それぞれ目の前にある問題を解決しようとした』ことです。アダム・スミスもケインズも「目の前の」問題の解決のための提案をしているということです。あくまでも「目の前の」。

アダム・スミスが国富論を書いた時の「目の前」はどういう状況だったか。
まず、本書で、『国富論』以前に経済学はなかったと書かれています。この時代以前は封建制・地主制の社会で、産業革命などで社会が変わっていてって、労働市場の成立や社会秩序の乱れなどが現れてきます。植民地を支配しなければいけないが戦費は嵩みます。この社会の状態をどのように理解すべきかという課題があった時に、アダムスミスが『国富論』を記したのです。国富論で取り上げた問題は①社会秩序②財政赤字③植民地④重商主義であり、重商主義(貿易黒字を目指す政策)を批判し、「見えざる手」(有名なフレーズですね)に委ねるべきだと説きます。

これを受けての18世紀末〜19世紀初頭のマルサスとリカード。このあたりになると産業革命後の経済で、資本家が台頭する社会。地主、資本家、労働者という3つの対立軸で経済が語られています。産業革命の進展により賃金が上昇し労働者が豊かになり、家族が増え、人口が増える。しかし農地がそれほど増えるわけではないので、食べ物がなくっちゃうのでどうする?という悲観論がマルサスの人口論。このままだったら農地を持つ地主が「差額地代」を得て地主だけが豊かになってしまう、なので穀物法(イギリスによる食料の輸入制限)反対!というのがリカードの主張。当時は工業が発達してきたとは言え、まだ農政が経済学の主な議題だったことが読み取れます。

で、時代は飛んでケインズ。僕らの時代の人間にとってケインズ経済学こそが経済学だと思い込んでいる部分が大きい。中学高校の社会の授業で「乗数理論」とか習ったし、経済学ってそれくらいしか習わなかったし。あたかも万能であるかのように日本人に浸透しているケインズ経済学を、著者はあくまでも特定の問題を解決するための理論でしかないと主張するのが、本書の最重要ポイントです。

『一般理論』(1936)前夜の世界経済は、1929年の大恐慌を受けて、とてもひどい状態。強引な政策をもってしてでも解決しなければいけない課題があったわけです。こんな経済状況を放置して自然に良くなることなんて待てないわけです。そこでケインズの登場。エリート中のエリート(であることを、かなりのページ数を割いて著者は主張)が、「正しい」経済政策として公共事業の拡大を推し進めるわけです。この「正しい」がハーベイロードの前提(エリートは常に正しい!)に基づく怪しい正しさだと、著者はブキャナンの公共選択に代弁させています。

さて、ケインズ後の経済論壇こそが、この本のハイライト。ハイエク、フリードマン、ブキャナンと、新自由主義(シカゴ学派)の登場です。彼らも、個々に問題を掲げ、解決を図ります。
ハイエクにとっての問題 = 集産主義
フリードマンにとっての問題 = スタグフレーション
ブキャナンにとっての問題 = 財政赤字

ハイエクは、自然な秩序への信頼によって問題解決を図ります。エリートによる社会工学的な解決方法に対立する考え方です。
フリードマンは、スタグフレーションのメカニズムを解明します。
ブキャナンは、ケインズ的処方は必然的な(財政の)偏りを生むと解きます。
ハイエクは『民主主義は自由において平等を求めようとする。社会主義は統制と隷属において平等を達成しようとする。」まで書き、ケインズ的な大きな政府による統制は隷属であるとまで言ってのけます。
この章は、ケインズ経済学に対する強烈な批判が込められています。

本書の著者である竹中平蔵は、「小泉改革」に際して経済財政政策大臣に就任し、民営化推進や公共事業の縮小などインパクトのある経済政策の先頭に立ってきました。この本が書かれたのが2010年。リーマンショック後に民主党が政権を取っていた時代です。財政赤字か急拡大し、自分がやってきた「改革」が水泡と帰す危機を感じていたのではないでしょうか。なので、ケインズ経済学は万能ではなく、今こそ自由主義に立ち返ってほしい思いが本書に現れているような気がします。

のちに、日本経済史において小泉改革はなんだったのかという評価がなされると思います。その時に、それぞれの内閣が解決しようとしてきた問題は、そして解決の手法はを考える時に、著者=政策立案者の思いを振り返ることができる面白い本なのではないでしょうか。


KIndleUnlimitedの本は変な自己啓発書かエロい本ばかりかと思っていましたが、本書のように読み応えのある本も探せばあるのですね。アンリミ、もう少し活用しなきゃ。

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2017.07.14

『そこのみにて光輝く』

佐藤泰志の小説が原作。

鉱山の仕事に失敗し、世の中から逃げて日々を過ごす達夫。仮出所し両親、姉とバラックで過ごす拓児。そして、拓児の姉の千夏。遁世を送る達也と、再貧困の生活を送る千夏・拓児姉弟の関わりが、重く描かれる映画でした。

鉱山の仕事で活躍する現実世界に戻ろうとする達夫と、再貧困の現実世界からの脱出が図れない千夏・拓児。この人間の組み合わせが、悲劇に悲劇が重なる重く暗いストーリーを織り成します。一縷の望みを描き、それを破壊する物語の酷さに胸が痛む。この世界に希望なんかない、幸福なんか絶対に訪れないという気分にさせられる。

最後のシーン、二人を照らす朝日が、人生の希望を連れてくる光だと信じて幕を閉じる。


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2017.07.05

『清須会議』

三谷幸喜の映画作品。Amazonプライムビデオにあったので、自宅で鑑賞。

織田信長が本能寺の変で亡くなったあと、織田家の跡取りをどうするかを決める「清須会議」が舞台。羽柴秀吉と柴田勝家の駆け引きが映画の主題です。

三谷映画だけあってコメディ仕立てですが、史実に沿う必要があるのが制約なのでしょうか、あまりコメディに突っ走ることもできず、だからと言って人間ドラマに徹することもできず、中途半端な位置付けに終わってしまってるかな、というのか印象。

歴史の主役に躍り出そうになりつつ権力闘争に敗れた柴田勝家が気になりますね。あとでWikipediaじっくり読もう。

清須会議(映画.com)

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2017.07.01

『組織戦略の考え方』

組織論の新書。Kindle版を購入して読みました。

文体が軽く、内容も系統立てて緻密に論理を組み立てるのではなく、感覚論が多い。タイトルに似つかわしくないなあ、組織論では有名な先生のはずなのに、と読み進めました。議論の緻密さはないものの、そのぶん平易な文章になっていて読み進めやすいですね。現実社会の組織について腑に落ちないところが、感覚的に納得できるようになります。

あとがきを見て、本書の文体に納得。雑誌「プレジデント」連載記事を主に単行本に仕立てたそうです。そりゃ、この軽い文体になるわ。

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2017.06.11

『あの会社はこうして潰れた』

信用調査会社の帝国データバンクのベテラン記者がまとめた、近年の企業倒産を類型別に集めて整理したもの。

過剰投資、営業不振など倒産事由はいろいろありますが、最近のトレンドは粉飾決算ではないでしょうか。本書でも、いくつかの事例が挙げられています。

気になるのが、じゃあ粉飾しなかったら倒産しなかったのだろうか?ということ。粉飾しなかったら問題なく経営継続できていた会社は少ないのではないだろうか?という疑問を持ってしまいました。実際には、粉飾により(ほんのちょっと)延命していた会社が多いのではと思ってしまいます。ただ、小さなキズだったものが、粉飾によりとんでもなく大きな致命傷になり、経営者は経営責任だけでなく刑事責任まで取らされるようになるというのはありますが。

いろんな倒産事例を見てて感じるのは、キチンと身の丈を知ることがいかに大事かということ。起業して回り始めれば経営者は成功体験で自信が付きますが、ここで勘違いせずに堅実な成長を目指すことが大事なのでしょう。

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