カテゴリー「書評」の584件の記事

2021.02.24

『国道16号線「日本」を作った道』


東京郊外を環状に取り巻く国道16号線。関西在住の頃は、小田和正など歌を聴いて渚へと導く心地よい道なんだと思い込んでた。横浜に住んでからは、物流大動脈のイメージしかなく、ギャップが大きくて悲しかった。

この本では、郊外ならではのカルチャーと、生糸貿易の重要性、関東平野という地形における16号線付近の多様性が述べられている。

何かを論じたものではなく、エッセイの集まりだと感じた。ああそうよね、16号線ってこんなだよね。だとか、郊外あるあるだとかを著者と読者が共有するような本か。地域ネタのエンタテイメント本だ。

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2021.02.22

『逃げるは恥だが役に立つ』

5年くらい前に大ヒットしたテレビドラマ。ネットでデータベーススペシャリストの情報を探すとなぜかこのドラマの情報が出てくる…主人公がデータベーススペシャリストを持っているという設定なんですね。(書類にチラッと映るだけでネット検索上位に出ちゃうって、どれだけマイナーな試験区分なんだか。)


ドラマはいろんなテーマがごちゃ混ぜになりつつ、取っ散らからないように、エンタメ性も持たせて構成されている。重いテーマの深刻な場面でテレビ番組のパロディーを妄想として持ってくるところがなかなか。


・家事の対価

・面倒くさい人との付き合い方

・愛情の伝え方と距離感


この辺りを、男女のビジネスライクな付き合いから始め、視聴者をハラハラさせながらのラブコメディーに仕上げている。


登場人物は全体的に孤独を好む人物が多い。津崎平匡は典型的なオタクSEで「プロの独身」として描かれているし、森山みくりは明るく社交的な人物に描かれているが打算的な側面があり他人との距離を持ちがちな人物として描かれているのではないか。だからこそ9条まである労働契約書という線引きのある関係からスタートして、互いの壁をちょっとずつ崩していくストーリーがな楽しめるのかと。


このドラマが一世風靡した理由の一つにエンディング曲の振り付けがあるが、見ているとなかなか難解なものだ。一回も飛ばさずにエンディングを見たが、全く覚えられない。

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2021.02.08

『職業、女流棋士』


女流棋士香川愛生の自伝兼将棋界の紹介といった本。
香川愛生は端正な容姿に鋭い言動と幅広い活躍で、ファンが多いのではと推測する。最近女流四段に昇段し、ますます本物感が高まっている女流棋士。なんとなく美人で周りからチヤホヤされながら華やかな女流棋士をやってるんだろうななんて勝手に思ってたけど、本書を読むとそうでもなかった。かなり苦労して育ち、将棋にのめり込むことで生き甲斐を見出し、将棋の世界に入っても苦労をして、彷徨って、今の香川愛生があるんだなと。
タイトル2期のあとなかなか実績を残してないのが残念なところですが(ここしばらくの女流は里見西山加藤の壁が厚く乗り越えられない)、大舞台での活躍も期待したいところです。

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2020.12.31

『データ分析人材になる』

会社がデータ分析部署を立ち上げた。でも集められたのは文系人材(たぶんマーケティングと営業出身者が想定されているかと)ばかり。どうする?的な本です。

データ分析プロジェクトを本書独自の「5Dフレームワーク」で行う手順と、文系からのデータ分析人材の育て方が本書のテーマ。わかりやすい手順とスーパーマンを求めない人材育成。かなり現実的な解決手法の提示に思います。

データサイエンスとかAIとかブームだけど、ビジネス課題の抽出と解決は、やはりビジネスの視点。テクニカルな部分はツールに任せて、ビジネスとの接点に注力すべきというのはデータ分析の仕事だけでなく大事な視点だ。

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2020.12.26

『あしたはうんと遠くへいこう』

破天荒な生き方の女性を描いた小説。角田光代による、「対岸」にいる人を描いた小説と言えよう。

主人公は父を蔑んでいるのか。そんな父の生き方を許さないのか。父が気付いた家庭から逃げ、地に足を付けることなく生きていくのか。そんな葛藤が見え隠れし、そんな葛藤から逃げるように行先のない生き方を続ける。いいんだ、うんと遠くに行けば。そういう著者のメッセージなんだろう。

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『あなたには帰る家がある』

山本文緖による、夫婦を描いた小説。設定からして、複数の夫婦や家族が登場して、ぜったいにドロドロになる下地が整えらえる。小説の展開は、案の定だ。妻が家に閉じ籠っていることに対する価値観が発火点。この辺、よく似た視点でドロドロになった小説を読んだなと思ったら、同じ著者の「眠れるラプンツェル」だったな。マンション住まいでの「猫」「自転車置き場」「生協」なんていう、眠れるラプンツェルでも出てきたアイテムも登場。複数の小説を読むことで価値観を重畳し、印象に残る読後感を持たせる作戦だろうか。

個人的には、茄子田太郎の記述が気持ち悪く、そこにばっかり引きずられてしまった印象。

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2020.12.14

『ネットビジネス進化論』


漠然と「ネットビジネス」と言われている分野の物事に対し、体型立てて分類し、それぞれの分野の背景や状況を語った本。この分野で先頭を切って走ってきた著者の主観が強い部分もありますが、この世界を外観するのにちょうどよかった内容でした。

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『事業をエンジニアリングする技術者たち』


WEB広告運営会社VOYAGEグループの技術者への、仕事への取り組み方などに関するインタビューをまとめたもの。

ドキュメントなし、とにかくやってみる的な開発方針。教科書に書いてある考え方に真っ向反対する方針に驚きです。アジャイル手法でもない、腕力勝負。小さく短期的なプロダクトならありなのかもしれないですが、上場している会社のシステム開発手法がこんなんだとは驚きました。スピード重視の体制を取ると、自ずとこうなるのでしょうか。

この会社、いろんな監査はどうやって切り抜けてるんだ?

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2020.12.02

『システム思考がモノ・コトづくりを変える』


最近流行りの「DX」(デジタルトランスフォーメーション)を行うための方法論を記した本。これもアンリミで見つけて落としたもの。

ビジネスを考えるのに、工学的アプローチを採るべきだと説く。具体的には、機能要求と非機能要求を分けて考え、表面的な要求(ドリル)ではなく真の要求(穴)を見出すべきだと。また、ビジネスで解かなければいけない課題は要素が複雑に絡み合うことから適切な分析技法が必要であり、OPM(オブジェクト・プロセス・メソドロジー)やシステムダイナミクスを推奨しています。

これらの手法は一般的でなく、正直言って本書の簡単な説明だけで始められるものではありません。まだビジネスフレームワークとして広く認知されていないので実務で使いづらいという難点もあります。(よく知られたビジネスフレームワークをプレゼンで使うと便利なのは、聞く相手もそのビジネスフレームワークを知っているから、つまり共通言語だからです。)筆者らは、きっとこれらの手法の認識を広め、DXブームに乗って共通言語にしたいんだろうな…

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2020.12.01

『彼女は頭が悪いから』


Kindle Unlimitedのリストを見ていたら、ずいぶんひどいタイトルの本が目に留まった。「彼女は頭が悪いから」表紙も醜悪である。内容も醜悪であり、ここまで含めて著者姫野カオルコの意図通りだろう。

東大生が他学の女子大生に集団暴行した事件を元に書いた小説だと言う。小説では、東大生が他学の人間をいかに蔑み、自分たちの優越感を快感としてきたかを描く。

実際の東大生はここまでひどく他者を侮辱的に見ないだろうし、ほとんどの人間が堅実に生きているとは思う。他大の学生だって、そこまで劣等感を抱きながら生きてはいまい。小説においては東大生、他大生、家族などの周囲の学歴に対する感覚をデフォルメして、読者の気分が悪くなるように書き上げた。著者の思惑通りの読後感にしてやられた。

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