『貧民の帝都』
養育院という貧民救済施設の歴史を軸に、東京の貧困層の生活を記した本です。
スラム街なんて日本では見かけなくなりましたが、江戸時代の統治政策上のものや、三大都市が都市化する過程で生じたものなど、けっこう最近まで存在していたのも事実です。大阪の新今宮駅周辺など「近づいちゃいけないよ」なんて場所が存在していたわけだし。
この本を読むと、意外と古くから貧困者を救済するための施設があったんだと感心します。渋沢栄一などの篤志家の働きが大きいですね。
現在の貧困者の状況は、スラムを形成していた戦後までの貧困者の状況とは大きく違います。よく目にする極貧困者は、ホームレスです。私は新宿に勤めていますが、勤務先周辺では特によく目にします。
彼らを「収容」する養育院のような施設は既にありません。理屈の上では、生活保護などの救済措置があるのですが、機能していない部分があることは、新宿中央公園の青いテントを見れば一目瞭然です。
秋より始まった世界不況で、テントの数を増やしてしまってはならないのですが…
貧民の帝都 / 塩見鮮一郎 / 文春新書 / ISBN9784166606559
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