『タソガレ』
移動図書館で子どもたちの絵本を見ているときに手に取った小説です。(この本を借りたせいで子どもたちが借りることができる絵本が1冊減ったのは内緒)
相貌失認という障害について描いた小説です。
相貌失認というのは、人の顔を識別することができない障害です。人の顔の識別は非常に繊細な能力を求められるので、苦手だという人も多いでしょう。私も、人の顔の識別はかなり苦手です。1度会っただけの人を識別することはまず無理で、3度くらい会ったらようやく「会ったことのある人」とわかり、5度くらいで顔と名前が一致する程度です。待ち合わせはどは、相手が寄ってくるのに依存しています。(なので、営業職や店頭販売職は避けて、事務職として生きています。)
この小説の主人公は「苦手」とかいう中途半端なものでなく、全く人の顔を識別できません。街中で父親に会っても父親だと判別できないくらいに。それを負い目として、そしてその負い目をうまく克服して生きている様子が描かれています。相貌失認の人も、自分が相貌失認だと気付かないでうまく生きていくコツを掴んでいるのでしょうね。
相貌失認だからこそ感じることができる世界をうまく描いています。そして、相手の負い目を理解する難しさと大切さも噛み締めることができる物語でした。
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