貯蓄性の高い生命保険に入っていると、定期的に「満期」を迎え、臨時的に現金を手にすることになります。何でもないように思えますが、意外とややこしいのが専業主婦の場合です。
サラリーマン世帯で収入のない専業主婦の場合は、いろんな側面で支援があります。
所得税 … 配偶者控除
厚生年金…3号被保険者
健康保険…被扶養者
生命保険の満期金が支払われた場合、上記のそれぞれの基準からオーバーして、対象から外れてしまうことがあります。
所得税の配偶者控除
年間の合計所得金額が38万円を超過すると、対象ではなくなります。
生命保険の満期金が唯一の収入である場合「合計所得金額」は下記のように計算されます。
合計所得金額 = (満期金受取金額 - 保険料支払総額 - 50万円)÷2
なお、上の式で計算した合計所得金額が38万円~76万円の場合は、配偶者特別控除という制度を利用することになります。
厚生年金の3号被保険者
厚生年金の第3号被保険者の条件は『年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ 同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満』(年金機構WEBサイトより)です。ここでいう「年間収入」についての解釈は、実はかなりあいまいです。
年金ダイヤルに2回電話をしましたが
1回目…年金機構においては生命保険の満期金をここでいう「年間収入」には含めないため、生命保険満期金の受取は厚生年金の第3号被保険者の認定には影響しません。他の要素がなければ、第3号被保険者のままです。
2回目…「収入」とは受け取った金額のことを指すので、生命保険の満期金受取金額が130万円以上の場合は第3号被保険者の条件から外れることとなります。
と、まったっく逆の回答となりました。第3号被保険者は厚生年金法という法律で定まっている制度なのに、運用方法が全く定まっていないということです。保険の満期金を専業主婦が受取るケースなんて多いだろうに、ひどい話です。
健康保険の被扶養者
こちらは問い合わせ先がよくわからず、関東信越厚生局に問い合わせました。
このWEBサイトでは「認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。」とあります。ここでも「年間収入」の解釈が問題となります。
電話での回答は、収入は満期金受取金額を指すとしたうえで、「収入とは、生計を立てるために投入しうる金額で、実態を見て判断することになる。定期預金の満期金や生命保険の満期金のような一時的な収入は生計を立てるために投入しうる金額とみなされることが少ないので、多くの(健康保険)組合は一時所得を除いて判断している」との玉虫色の回答でした。判断は厚生労働省ではなく各健康保険組合がするということでした。
ということで、公的機関への問い合わせでは、年金・健保の扶養の条件についてはまったくわかりませんでした。
厚生年金の制度、健康保険の制度とも国が定めている制度にも関わらず、認定者と運用によって適用される人の利益、不利益が変わってしまうひどい状況でした。これでは、生命保険満期金受取を税務申告しないことによる扶養維持を図る人もたくさんいるのではないでしょうか。(当然、不正行為です。) しかも、社会保険庁がなくなったことによって社会保険制度を取りまとめる主体が存在しなくなり、ますます混乱に拍車をかけているような気がします。
専業主婦にとっては将来的に不利にはなるのでしょうが、全国民の公平性のために、マイナンバー制度を 早急に導入するとともに、職業によって分かれてしまっている健康保険制度、年金制度も統一すべきなんじゃないのかなと感じました。
2012.10.29追記
本日、地域の年金事務所に問い合わせたところ、このケースの場合は年金第3号被保険者から外れることにならないとのことでした。会社の見解に関わらず、国民健康保険加入手続きを区役所等で行う際に、年金第1号の加入手続きをしない旨を窓口担当者に伝えてほしいとのことでした。
問い合わせる度に二転三転で、非常にめんどうな状態が続いています。