『ゆれる』
映画を、監督自身が小説化したという作品です。その映画を知らずに、小説だけを読みました。
何人かの主要人物の、その個人の視点で章ごとに物語を進めていきます。微妙にシーンをオーバーラップさせながら話を進めていくので、それぞれの人物の立ち位置がより鮮明に浮き出てきます。
東京に出て行って(一見)華やかな人生を送っている者と、田舎に縛り付けられて何の選択肢もなく人生を送っている者という構図が根底にあります。東京に出て行った者は、何となく後ろめたい思いをしている。田舎に残った者は微妙な劣等感、憧れ、嫉妬を持っている。
この嫉妬感をうまく表現できない登場人物をうまく描いています。(ややこしい表現をしてしまいましたね) 事故が起きた根底は劣等感だし、弟が兄を庇うのは東京での生活に逃げてしまった後ろめたさです。
そういう根底の中、叔父の登場が物語の中でさらに読む側のこの感情を複雑にしています。なかなか味があっていいなと思います。
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