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2013.01.11

『ルネッサンス』


ルノーから送られてきて日産の再建を果たしたカルロス・ゴーンの著書です。日産リバイバルプランが進行中だった2001年に書かれたものです。

有名経営者にありがちな半生の自叙伝そのままです。前半は「俺はこんなに頭よくてすごいんだぜ」的な文章が続き、嫌味な感じです。

後半には、日産の再建でどういうところに注意を払ったのかが書かれているので、この部分は多いに参考になります。

社内でも紙や事務用品の節約を呼びかけ、冷暖房も過度の使用を控え、夕方ある時刻以降休止する措置まで導入した。こうした措置は、実際には社員に罰を与えているだけで、本質的な問題解決につながるものではない。…コスト削減のための優先順位設定からの逃避である。

手っ取り早いコスト削減策ではなく、きちんと事業の本質を捉えたコスト削減策を取らなければならないと説いています。本質にメスを入れるための力こそが企業再建に求められているのです。

過去にどうやってきたかはどうでもいいことです。私が聞きたいのは、これからどうするつもりかということです。

長年やっている業務手順に対し、なぜそうやっているのか確認したところ、前からこうやっていると答えられることは頻繁にあります。もっと効率よいやり方があるではないかと応答すると、言い訳が始まることもしばし。ここで言い訳を言わせ説明責任を果たさせようとする管理職もたくさんいますが、そんなことはどうでもよく、この先いかに効率よく業務を進めるのかが大切なはずです。そんな僕の思いをゴーンは簡潔に語っています。

仕事のプロセスが尊重されるように促し、関係するあらゆる意見を聞き、そして確固たるビジネスの論理によって決断を下す

リーダーの決断はブレてはいけません。多少の揺らぎは人間だからあるんでしょうが、方向を見誤ってはいけないのです。このゴーンの文章は自動車デザインについての部分ですが、ゴーン個人の好みではなく、日産が目指す方向性に合致したものかどうかが唯一の基準なのです。ファッション業界などでは個人の感性が全てでビジネス的な判断が下されることがよくありますが、本来はビジネスの論理によって判断を下さなければいけないのです。

日々どのような問題に直面していようと、日常生活のディティールをおろそかにしてはならない

日常生活がチキンとできている(と社員が思う)ことはエグゼクティブにとって大切なことです。これは文化面でも言えること。私生活をだらしなく過ごすのではなく、有意義に過ごすことは大きな組織のリーダーに求められている素質でもあるんでしょう。

全体としてはまとまりのない著作ではあるものの、瀕死の大企業日産自動車を立て直した大物経営者だけに、心に残るフレーズが散りばめられていますね。


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