東京地裁で裁判を傍聴
昨年の後半は少し法律の勉強をしていました。でも、法律の勉強を進めていると、結局のところものごとを決めるのは全て裁判手続きでという風におもってしまいます。でも、裁判手続きってなかなか経験があるものではありません。
ということで、ちょっとでも「裁判」のことを知るために、裁判の傍聴に行ってみることにしました。せっかくなので、事件がたくさんありそうな東京地方裁判所に行ってみます。栗平から電車も直通なので、立川支部や横浜地裁なんかより行きやすいし。
霞ヶ関駅で千代田線を降りて地上に。いわゆる官庁街です。朝の9時半に電車を降りたら、官庁に出勤する人がたくさんです。みなさんがお勤めの中、僕は東京まで物見遊山です…
裁判所の建物(東京地裁と東京高裁が同居)に入ります。入口で空港のような手荷物検査を受けます。iPhoneと携帯とiPodをトレーに乗せ、自分は金属探知機を通ります。
入口正面の守衛さんが座っているところの横にカウンターがあり、今日の開廷が書いてあるファイル(いわゆるフラットファイル)が並んでいます。同じファイルが何冊かあり、これを見ながら傍聴する事件を決めます。同じ場所同じ時間に指定されている事件が3〜4件あるのが不思議。
【東京地裁635法廷】
10:00の事件の法廷に向かいます。傍聴席は7人くらい。廷内には書記官が座っています。書記官が「○○先生」と呼ぶと傍聴席から弁護士が原告席に。すると裁判長が入ってきて、書記官が事件番号を読み上げます。
裁判長が「準備書面○○を受け取っています。陳述しますか?」と聞き、原告側弁護士が「陳述します」「では次の期日は」など淡々と進んでいきます。書類が整っているかの確認をするための場所という感じです。
【管理費等請求事件 弁論】
そのなか、ちょっと変わった事件が取り扱われました。事件名は「管理費等請求事件」。原告がマンション管理組合で、被告がマンション区分所有者です。弁論を聞いて推測するところ、被告がマンション管理費と修繕積立金を支払わない。被告に払うよう言ったところ、被告はゴミ置場の横に住んでおり清掃をしているため労務提供が発生していてその結果として反対債権を有しているため管理費等は相殺されているという主張のようです。裁判長が期待した文書が提出されておらず、そのせいで口頭弁論になってしまったようです。また、原告が認識している管理費等の金額と被告が認識している管理費等の金額にも差異があるようです。
裁判長は弁論を聞いたあと、原告に管理費等の計算根拠を管理規約等から提示するよう求め、被告には反対債権である清掃の労務費の計算根拠を求めるよう指示し、次回期日の決定となりました。
この事件には特徴があり、原告被告とも弁護士を立てていないことです。このせいで裁判に必要な書類(陳述書、証拠)がきちんと提出されていないし、弁論もチグハグなのです。裁判長はイライラしながら原告被告双方に「弁護士さんに依頼されるご予定はありませんか?」と聞き、原告被告とも「その予定はありません」と回答。裁判長のイライラはさらに募っていました。
原告側で出廷していたのは管理組合理事長のようですが、傍聴席に2人のサラリーマンが待機していました。おそらく管理会社ではないかと思います。管理会社なんだったら会社の法務部門をつかってちゃんと対応しろよと思ってしまいました。
【東京地裁606法廷】
この法廷の事件が全て終わってしまったので、別の法廷へ。こちらは裁判官が3人いる、やや大きい法廷です。一人は美人裁判官でした。(どうでもいいですね)
一つめの事件は被告側弁護士が欠席で、準備書面を陳述することで終わり。
【保険金請求事件 弁論】
二つめの事件は保険金請求事件です。これも口頭の陳述があったので、事件の概要が推測できました。スポーツクラブで感染症が流行し、会員の退会がすすんでしまったためスポーツクラブに損害が発生したため損害賠償責任保険を契約している保険会社に保険金の支払いを求めているものです。原告(スポーツクラブ)は今回の事案について約款に記載されている支払い条件に該当すると主張し、被告(保険会社)は損害賠償責任保険は第三者からの損害賠償請求に対応するための保険であり契約者自身の損害を担保するものではない旨を主張していました。これで弁論が終結し、次回は判決とのことです。
【建物賃料減額確認請求事件、電気料金請求事件 弁論】
三つめが、意外と長くかかりました。ショッピングセンター運営会社と、そのテナントとの間の訴訟です。二つの事件が同時に進行しています。
一つめが、テナントがショッピングセンタ運営会社を訴えているもので、賃料の減額を求めているものです。テナント=原告、ショッピングセンター運営会社=被告です。
これも口頭での陳述ではないものの準備書面の説明が口頭であったため、事件の概要を推測することができました。テナントがショッピングセンターに入居することが決まってから入居するまでの間にショッピングセンター運営会社からテナントに賃料を減額するような発言があったらしく、それを根拠に賃料を減額すべきであることを争っている事件のようです。
原告は鑑定を希望していて、原告が鑑定を行うなら被告もそれに乗りたいという話が進行しました。また、鑑定を進めるにあたって、ショッピングセンター運営会社はどのような要素を元に賃料を決めているのかを提示するよう裁判長から求められました。
これと同時並行で進んでいるのが、ショッピングセンター運営会社がテナントに電気代の支払いを求めている請求訴訟です。先の事件と原告被告の関係が逆です。原告席に被告代理人、被告席に原告代理人が座ったまま裁判が進行します。
ショッピングセンター運営会社が電気代を電力会社の単価から上乗せしてテナントに請求していたところテナントが上乗せ分を差し引いて支払ってきたので、その差額の請求訴訟を起こしているものです。このテナント請求電気代は、ショッピングセンター運営会社の主張によると商慣習であり他のショッピングセンターでも同様な電気料金請求を行っていることの証拠提出もなされています。このショッピングセンターに商慣習を当てはめたらどうなるのかを次回期日までに提出するよう指示がありました。なお、電気代については契約書には「双方協議の上決定する」と書かれているようで、この辺りが今後の争点になりそうな気がします。
【東京高裁506法廷】【道路交通法違反事件 判決】
この法廷も終わってしまったので、こんどは刑事事件を傍聴しにいきます。地裁だと思っていたのですが、高裁でした。道路交通法違反事件の控訴審判決でした。被告は過去に酒気帯び運転で免許証を失効し執行猶予付き有罪判決を受けたのち、無免許酒気帯び運転で再び執行猶予付き有罪判決だった人です。今回無免許運転を行ったというのが容疑です。事実については被告が認めているものの、前橋地裁で下された懲役5ヶ月の実刑判決が重すぎるということで控訴していたものです。刑事事件の判決なので、判決文がすべて裁判長により朗読されます。被告の事情を勘案しても実刑5ヶ月が重すぎるとは言えず、控訴棄却するとの内容でした。そのあと、被告は最高裁に上告できる旨の説明があり、閉廷となりました。
こんな感じで、3つの法廷でいくつか事件を傍聴しました。有名な訴訟などはマスコミで双方の主張が報道され、それに対する解説なども流れるので法廷なんかよりも報道の法が役に立つのですが、それでも裁判の現場を実際に見るというのはなかなか面白い体験でした。世の中の人はこんな風に思ってこういう行動をするんだということを聞いたりもできました。弁護士にもいろんな人がいるし、原告被告の裁判への臨み方も様々でした。当事者が存在する現実に起きている事件を取り扱う場ですのであまり興味本位で裁判傍聴するのはよくないですが、それでも一度は裁判所を体験してみるのをお勧めします。
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