『ゆうじょこう』
硫黄島の漁村から熊本の遊郭に売られてきた娘を描いた小説です。
硫黄島の漁村のことしか知らない田舎娘が、遊郭という大人の世界に急に飛び込んだ主人公イチの、世界観の急展開の様子が前半に描かれます。最初の頃の抵抗ののち、イチは自分が置かれた環境を受け入れるようになってきます。この描写が、意外と暗くなく、やわらかに描かれています。
女紅場(遊女のための学校)で読み書きを習うなど、徐々に教育も受けて育っていく主人公イチ。そのなかで、いろいろな遊女の生きざまを見ることにもなります。
明治時代の遊郭の遊女、親に売られてきた娘なので社会の底辺のイメージではあるものの、遊女の中での序列があったり、遊郭で教育を受けたりと、自分たちはそれほど底辺イメージをずっと背負った生活をしているわけではないように描かれています。それでも結局は拘束を受けて強制労働させられており、その立場も自分で理解している悲哀があり、それを覆い隠すものでしかないのかもしれません。
社会の変化と花魁の妊娠を機に遊郭全体が大きく揺らぐ事件がおきます。この中でも、そういう大きな流れに身を任せて新しい世界に足を踏み入れていく後半。やはり、遊郭暮らしから逃れることを心の底で望んでいたんだと感じさせられます。
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