『銀二貫』
久しぶりに時代小説。大阪の小さな寒天問屋を舞台にした物語です。
仇討ちで斬られそうになる主人公の少年が寒天問屋の主人に救われるところから物語が始まります。仇討ちで孤児になった少年が問屋で丁稚奉公。そこで厳しい修行に耐え、試行錯誤し、成長していくサクセスストーリーです。
この小説中、大坂の街が何度も大火に遭います。そして、この寒天問屋の仕入先がある京都も大火に遭い、伏見の工場も大火の影響で失ってしまいます。そして、その大火で主人公、主人公周辺の人々、店なども大打撃を受けてしまいます。江戸時代というのはこんな災難に何度も遭うような、壮絶な時代だったのでしょうか。それでも、何度も立ち上がる主人公の姿は素晴らしいものです。
この物語で、丁稚である主人公が新商品開発に根気強く取り組む姿が描かれています。問屋の丁稚でありながら、製造元へ毎冬入り込み、試作を繰返してとうとう満足のいく中間製品を作り出します。そして、また旧知のツテを経て試行錯誤し、新しい商品開発を成し遂げます。仕事の執念というのは、このように見せるべきなんだろうなと時代小説を読みながら思ってしまいました。
天明から寛政という、大恐慌とそれに続く好況の時代背景もよく伝わり、天満宮さまへの信心が根底に流れる人情物語。それに主人公のサクセスストーリーという、なかなか読み応えのある時代小説でした。
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コメント
「火事と喧嘩は江戸の華」と謡われてるくらいだからやっぱり江戸時代は火事が多かったのでは?
投稿: カノン | 2013.10.18 21:04
カノンさん>脆弱な都市だったんだろうなと感じます。その中でも生きる町民、たくましい。
投稿: くろかわポタリング研究所 | 2013.10.18 21:48