『ヒルズ黙示録』
2004年〜2007年頃に世の中を騒がした「ライブドア」を振り返ったルポタージュです。
ライブドアの一連の事件で世間が一番注目したのは、フジサンケイグループとの攻防でしょう。この本も、フジサンケイグループとの攻防を克明に描いています。何となくこの事件はライブドア社長堀江貴文の独走vsフジテレビ会長日枝久の防御のイメージだったのですが、その前にグループを追われたフジサンケイグループ元議長鹿内宏明が大きく関わっていたのですね。お家騒動にうまく付込んだ雰囲気もします。こういうのを巧くけしかける村上世彰の存在も大きいです。
その村上や、三木谷浩史・北尾吉孝などと活躍の時期が同時期だったというもの大きいですね。本書で指摘していますが、株式市場の規制緩和をフル活用した面々が一気に活躍したということでしょう。これに乗じて商売を大きくしたリーマンブラザーズのような証券会社の存在も見逃せません。結局、ゼロ年代半ばってのは、そういうバブルマネーの時代だったんですね。
本書であまり触れらていないのが、結局堀江貴文や宮内亮治などが武器としたのは、投資家から預かっている他人の金であること。他人の金をあたかも自分のものかのように扱い、周囲を騒動に巻き込んでいるということです。本書では証券規制緩和を宮内がうまく利用して練金したかのように書かれていますが、そうではないことが重要なはずです。
で、ライブドア事件で堀江たち経営者は結局何が悪かったのか。
『一つひとつ専門家に聞いたら『これなら良いよ』ということだった。だからやってしまった。』『堀江たちは証券市場や法律など制度の隙や穴を見つけ出すことに、まるで自らのレゾンデートルがあるかのように、のめりこんでいく。』など、結局「これが悪かった」というポイントが見つからないのがこの事件のわかりにくさ。表面的には、投資子会社が出した親会社の株式売買で利益を連結に盛り込んだことが粉飾だってことですが、このことも非常にわかりにくいです。
なんとなくウヤムヤにライブドアは悪かったことにされ、そのうちリーマンショックで経済全体に冷や水を浴びせられて熱狂が終わりました。この本を読むと、あの頃の経済って熱狂だったんだな、と振り返ってしまいます。
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