『それをお金で買いますか』
「白熱教室」で有名になったマイケル・サンデルの著書です。
いろんなものが市場化されるなか、道徳的な価値観について金銭的尺度で数値化され、売買されることの是非を議論している本です。
資本主義経済システムにある社会的主体のほとんどは「株式会社」であり、株式会社の使命は利益を出すことですから、いろんな主体がいろんなところに目をつけて利益の源泉としようと躍起になることはある程度仕方ないこと。でも、だんだん歯止めがかからなくなっているではないかというのがサンデルの意見なのでしょう。
道徳的に躊躇いのあることで市場化されてしまっている事例として、売春が挙げられます。売春を是とするか非とするかは、いろんな解釈があり、世間全体で定まった是非はまだないと感じています。売春容認派は、売春婦は自らの選択で金銭を得てサービスを提供しているのであって、他の経済活動と何ら変わらないという意見が多いのではないでしょうか。しかし、売春婦は金銭的に困窮しており、性サービスを提供するしか選択肢がないとなれば、話は別です。金銭という人格とは別の判断材料を強制力を持って押し付け、結果として望まない行為を行なわざるを得ない状況に追い込まれているのではないかという考えもあります。経済的強者が、経済的弱者に対し札束で人格を奪っているという言い方もできるでしょう…
まあ、こんなことを、他の事例も持ち出して「市場化」に対する課題提起をしています。
日本では、一時期流行った「小泉旋風」で市場化が大きく進んだイメージがあります。アメリカでは、さらにその先を行くのでしょうね。何が市場化されるべきか、何は市場化を阻止しなければいけないか、これは国民それぞれが考え、何らかの形で(公には、選挙の投票活動という形で)表現しなければいけないのでしょうね。
追記:この本、なぜか文庫サイズよりちょっとだけ大きい。ブックカバーが入らず、困りました。なぜ?
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