『失敗の本質 ー 日本軍の組織論的研究』
組織論のバイブル的な教科書。題材は大東亜戦争における日本軍(帝国陸軍、帝国海軍)です。
日本軍の失敗事例として (1) ノモンハン事件 (2) ミッドウェー作戦 (3) ガダルカナル作戦 (4) インパール作戦 (5) レイテ海戦 (6) 沖縄戦 という6つの失敗作戦を指揮命令系統と意思決定の面で分析し、総論に持っていっています。
総論としては、不徹底な官僚主義が目的の喪失と戦術の不徹底を招いたという結論です。
終盤の、アメリカの軍組織・企業組織と、日本の大戦時の軍組織・戦後の企業組織の対比が秀逸。日本は官僚型組織に加え情緒的な人間関係も重視したことにより、帰納的な学習による継続的発展には強みを発揮するが、演繹的学習による革新的発展には弱いと述べています。こんなこと、散々言われていることじゃないかと思うかもしれないのですが、なんとこの本が発行されたのは1984年(昭和59年)というバブル前夜なのです。この後、アメリカ企業は日本的経営に学べと、日本企業に学ぼうとするのですが、それより前に書かれた本なんですよね。結局、日本ではバブルが崩壊し長い構造不況に陥るわけですが、そして2010年代の今になっても、日本企業は革新的な製品開発を行う力がないと非難されているんですよね。日本での組織論の傑作である本書から何も学べていませんね。
結構意外だったのが、本書が日本の敗戦がこれらの作戦の失敗にあるという基調で書かれていること。歴史の教科書では、日本は無謀な戦争に突入し敗戦に至ったという書き方が主流です。この本のテーマがわざと開戦そのものの是非を外して書かれているにしろ、違和感があります。太平洋戦争への見方が変わりそうです。
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