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2016.03.16

『聖の青春』

羽生世代の一人として活躍しながら29歳で亡くなったA級棋士、村山聖の人生を綴った本です。

5歳で重病を患い、病院のベッドで覚えた将棋を極め、突き詰めていく様子を将棋雑誌の記者が書き起こしています。常に死と隣り合わせの人生。それでも自分の存在意義を確認するため、一局一局を生きるか死ぬかという重みを持った勝負として闘い、奨励会から棋士へ、そしてA級へと登りつめます。谷川浩司に勝ち「名人」になることを目標にしながら。

死と隣り合わせにあることを認識しながら、麻雀や深酒など、東京で無茶な暮らしをする村山。周囲は心配だっただろうけど、きっと短いだろう人生の密度を高めるために目をつぶっていたんだろうと思います。付き合う周囲も、どう付き合えばいいか難しかっただろう。

そして、癌の再発でいよいよ自身の寿命が近づいていることを悟る村山。A級に昇級して直後の休場。広島市民病院での闘病。A級で手が届きそうになったところで、遠く宇宙の彼方に飛んでいく「名人」。プロ棋士はみんな将棋に命を懸けて生活をしているのでしょうが、村山のようにこれほど濃く、目に見える形で命を懸けて対局してきた衝撃は、棋界でも重い歴史ですね。

村山聖の人生は、この秋に映画化されます。将棋界では、大イベントとして取り上げられていますね。

村山が亡くなって18年、まだ同世代の棋士(いわゆる羽生世代)はA級などで活躍を続けています。


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