『永い言い訳』
西川美和原作・監督の映画作品。
作家衣笠幸夫が不倫をしている夜に、妻の夏子とその友人ゆきがバス事故で死ぬ。幸夫は淡々と妻の死という事実を受け入れ、ゆきの夫・陽一は感情を抑えられない。
物語の序盤では、幸夫は夏子への愛が冷めているから淡々としていると思わせているが、徐々にそれだけではない感情を見せてくる。ストレートに人を愛し、死を悲しむ陽一との対比で、幸夫は愛する対象も、自らの人生も、一人称の視点で深く入り込むことができないのだ。それでいて人との比較は怠らない。圧倒的に劣者だと思っていた陽一がときおり見せる幸せに、たまらなく嫉妬して感情が昂ぶってしまう。
第三者視点では冷静に、深く心を捉えることができる幸夫の描き方も面白い。その観察する対象としての西川美和は小説家という職業に何を見ているのか。幸夫の思いを陽一の息子・真平に代弁させ、真平の心の欠点(これは幸夫の心の欠点でもある)を幸夫に冷静に指摘させる恐ろしさが、この映画だった.
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