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2017年1月の3件の記事

2017.01.31

『牝猫たち』

『牝猫たち』



池袋の風俗嬢を描いた映画。日活ロマンポルノリブートプロジェクトの作品です。

70〜80分の短編で10分に1回の濡れ場を入れるという制約付きの成人映画のジャンル。このジャンルでいくつか公開されている作品の一つです。機材のデジタル化などで撮影費や配信費が安くなっているから復活したのでしょうか。

で、この作品。ネットカフェ難民、シングルマザー、不倫といった女性が無許可営業のデリヘルに集い、客として描かれるのは引きこもり、高齢者、ヤク中の芸人。ネット炎上を狙う若者や個人のベビーシッター青年なども登場させ、現代社会の暗黒部をステレオタイプに描いています。

退廃的だけど現実的な世界観のなか、ただ彷徨う女性の心を追う映像。そのセックスに愛があるのかどうか、女性にすらわからない。何にしろ今ここで求め求めれ、時が過ぎ去ればいい。そのセックスに現実感なんてまるでない。

妻を連行された夫は、児童虐待の母とヤク中の彼に連れられていった男の子はどうなるのか、その先の物語を想像するとぞっとする。そういう後味の悪い感覚を観客に残すのが製作者の狙いだろうか。

牝猫たち(リンク先は日活ロマンポルノリブートプロジェクト)

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2017.01.26

『住友銀行秘史』


昨年くらいに経済誌などで話題になっていた本。気にはなっていたものの、なかなか読むまで至らずでしたが、ようやく読むことに。

バブル崩壊の象徴とされるイトマン事件に対するメインバンクである住友銀行の首脳の動きを、当時の部長のメモと解説により読み解こうというものです。

この本を読んでいて思うのが、大企業の幹部たちがいかに「人事を巡る権謀術数」に興味があり、そこにのみ焦点を当てて行動をしているか。そして、そのことがいかに組織を歪めてしまうか。実務としてサラリーマンをしている人間にはよくわからない世界なのですが、こういう世界が本当にあるものなんですかね。そんなことにパワー割いてないで仕事をしろと言いたい。あるいは、高度成長期からバブルの頃はこの世界があったからこそ日本は成長できたのでしょうか。

イトマン事件でなぜ許永中や伊藤寿永光などに暗躍されてしまったか。本書では磯田会長と河村社長の独裁により招いてしまった事件と描きたいようだが、ほんとうそうなのか?という疑問が残って本が終わってしまう。
著者の國重惇史氏はのちに住友銀行を出て活躍することになるのですが、このイトマン事件での「メモ」を書いている時点で、そしてこの本を書いている時点でも、いかに傲慢で自信家なことか。

イトマン事件を横から見ている立場の職員のメモが経済史に非常に重要な史料であることは確かでしょうが、この本の体裁はどうかな?と思ってしまいます。


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2017.01.24

『言の葉の庭』


君の名は。の新海誠のアニメ。雨の新宿御苑が舞台です。

冒頭の新宿御苑新宿口の入口、アルコール持込禁止の看板が何気なく印象的に描かれます。そして、雨の御苑の東屋のベンチと金麦を印象深く刻み込みます。

主人公の靴製作は、耳をすませばのバイオリン職人と同じ印象。現実そうで非現実的な、少しカッコいい職人を目指す夢。ただ、言の葉の庭の靴は「歩く」というストーリーにつながる暗喩なのがポイント。

職人を目指す努力が大人じみて、高校の授業を聞くのは子どもじみているという感覚は新海ワールドなんだろうか。秒速5センチメートルでも、君の名は。でもそうだったか。あるいは中高生を扱った映画作品は全般的にそうなのかもしれない。少しだけ日常から離れた体験を求めて映画作品を観る気分そのものかもしれない。

その映像のベースにあるのが中央総武線の線路だったり新宿駅だったり、新宿御苑だったり。日常にベッタリ張り付いた光景を美しくデフォルメして映像にする。現実との距離感の錯覚に没入する40分の作品でした。

言の葉の庭

新宿御苑でのビールに憧れるが、くれぐれも御苑内では飲酒禁止です。

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