『サピエンス全史』
人間が現在暮らしているこの世界はどのような経緯をたどって成り立っているか、そしてその中途にあった人間や現在の人間は幸福なのか。未来に訪れるであろう人間像は、倫理的にどうなのか。そういうことを疑問提起した書籍です。
日本で出版されて半年すこし経ち、出版時から徐々に書評などで評価が高まっていた本。いろんなところでそれだけ言われてるんだから読んどかなきゃなと思いつつ時間が経ち、ようやく読みました。なんだか『銃・病原菌・鉄』と対比されて表されることが多く、そういう文化論なのかなと思い読み始めたのですが、そうではなかったです。
なぜ数ある動物種の中で、しかもいくつかあった人類の中で、ホモ・サピエンスだけがこれだけ他者を寄せ付けない地位を築いたか。それを、本書では認知革命にあると説きます。現生人類のみが「想像」を行うことができる能力があると。その想像ゆえに、近接した他者だけでなく、もっと広い範囲の人間と協力体制を築けると。
そうやって狩猟採集生活に力を発揮するホモ・サピエンスの勢力範囲が広がり、そうして迎える農業革命。そこで、生産量は伸び、人口は増え、仕事は増えた。このことが、人類を幸福にしたか?が、本書の最大の疑問提起。定量的に測定すれば、幼児死亡率は減り、富の蓄積も可能となり、「幸福」となったのでしょうが、それが幸福なのかと。そして、家畜として有用な種(牛、鶏など)の個体数も激増したが、それらは小さな檻に閉じ込められている。これらの種は「成功」と言えるのか。直接的な表現はありませんが、著者は、農業革命後や産業革命後の人類の幸福は、しょせん檻の中で飼われている家畜の繁栄と同じではないかという印象を持っているのではないでしょうか。
昨今、人工知能が脚光を浴びていますが、これらシンギュラリティに結びつくのか。そしてシンギュラリティ後の人類は幸福になるのか。思い課題を提示した書籍です。
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