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2017.10.05

『人工知能と経済の未来』

一時期、AIに仕事が奪われるなんて煽り文句が流行りましたが、そういう世の中になった時の経済をマクロ経済学視点で予想・解説した本です。1年くらい前に発売された本ですが、まだいろんなところで紹介されたり引用されたりしていますね。

まずは、AIとは何か。AIの開発の歴史と手法が簡潔にまとめられています。その後、人間の労働をAIが取って代わることがさけられない展望を描き、そして人間が労働をAIに奪われた後の世界をどう設計すべきかについて、ベーシックインカムの提案を紙幅を割いて説明されています。

いくつか、気になる点が。

今後(この本では2030年頃と予想)やってくるAIが人間の労働を置き換える時代。しかし、このような変革を人間は何度か見てきているはずです。定住革命だったり、農業の機械化や効率化、工業化など。しかし、その変革では人間の労働機会はなくならず、むしろ労働機会が増す結果に終わっていると思います。AI革命でも「何か」労働機会の発生があるんじゃないのかなぁ。その何かが思いつかないけど。

あと、消費は飽和していないという筆者の主張です。このへん、経済学に疎いのでちゃんとした理論で僕の気持ちをここに書けないのが残念なのですが、あるていど消費は飽和していると思うんですよね、現代の日本経済。確かに、第3章の最終節「需要創造型のプロダクト・イノベーションは必要か?」の中で、追加で金銭を受け取ったら追加の消費をする行動について書かれていますが、だからと言って今の日本経済において追加の金銭を受け取るために追加の労働を行いたい人間がかなり減っているのでは?と思うのです。70年代頃は労働機会があればどんどん労働に励んでいたと思うのですが、2010年代の今では「ワークライフバランス」など追加の労働が好まれない傾向にあり、やはり消費を増加する思いが頭打ちに思います。

このへん、前提条件にいくつか疑問を持ってしまうところもあるのですが、でも最終的には一般労働者の労働機会は減ることを前提に、経済学者や経済官僚・政治家は次の日本経済を設計していかなければいけないと思います。

本書は、労働機会の減少により「職に就けるのは1割」という想定をしていますが、僕はみんなが週に10時間くらいずつ働く社会がいいなぁ。

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