『非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学』
アンリミ(Kindle Umlimited)の光文社新書から。
非対称情報下の市場経済という分野で2001年にノーベル賞を取ったスティグリッツの考えを一般にわかりやすく新書に示したものです。2002年の著書なので、比較的旬な頃に書かれたのでしょう。
一般的な経済学での需要供給曲線は、経済の参加者が全ての情報を得ていて合理的な選択をする前提で書かれていますが、実際にはそうではありません。合理的云々の部分は最近流行りの行動経済学で詳しいのですが、本書で取り上げるのは参加者が全知ではないこと。片側だけが情報を得ていることで需給曲線にどういう影響があるかをわかりやすく解説しています。
本書で取り上げる題材は、中古車(レモン問題)、保険(モラルハザード問題)、雇用といったものです。題材に対していくつか仮定を入れて需給曲線をいじるのですが、もう少し数学的に遊んでも面白いのになという物足りなさがあります。ただ、当時ブームになったスティグリッツを広く紹介する目的ではこれ以上深く掘り下げると難ありなんでしょうけど。
スティグリッツの人物像や、小泉改革による日本経済など、出版当時に要請されただろう事柄に紙幅を割いていることからも、あまり後年に深く読まれることは想定していないようです…
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