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2017.12.17

『実践 行動経済学』

今秋のノーベル経済学賞で有名になったセイラー教授の行動経済学です。経済週刊誌などではここ数年ずっと話題でしたが、ここにきてもうひと盛り上がりというところでしょうか。

週刊誌での行動経済学特集は読んだことがあるものの、ちゃんと一冊を読んだことはないなと、Kindleでダウンロードしました。

人間は全知全能で合理的な判断ができる「エコノ」ではなく、知らないことも勘違いすることもあり怠惰でもある「ヒューマン」なので、一般的な経済学どおりに経済は進まないってのが、よくある行動経済学の説明。この本も、そのような進行。(てか、この本の説明を受けて経済誌の行動経済学は書かれているわけで。) この本の最初に、カフェテリア式の給食で、食べ物をどのように並べるのがいいのかという話題が出てきます。取りやすいところに置かれた食品が、当然いちばんよく食べられる。いい場所に、子どもの好みのものを置くのか、健康によいものを置くのか、いちばん賄賂をたくさんくれた業者の品物を置くか。本書ではこうやってところどころ皮肉を入れて話を例えていくので、なかなかに楽しめる本に仕上がっています。

この本に紹介されているアメリカの医療保険制度に驚きました。なんと、医療保障プランのデフォルトをランダムに割り当てると。社会保障制度なんて複雑極まりないものなので一般市民はたいてい「おすすめ」をそのまま受け入れざるを得ないのに、最適かどうかわからない「ランダム」を割り当てられるってどういうこと?と、そりゃあこの手の経済学者は面白がって取り上げますよね。

この本で「ナッジ」という言葉がたくさん出てきます。化学反応の触媒のように、変化のきっかけというのでしょうか。甲乙付け難い複数の選択肢におけるサジェストという感じなのか。そのナッジを、どのように行うか、難しいところです。ナッジを効かせすぎると市民から選択の自由を奪ってしまう。しかし、いいナッジを与えないと、非合理的な選択があふれてしまう。本書の最後のほうで「選択の自由を促進する形で介入するべき」とあり、まさしく政府はそのような介入の方法を手探りでやっていかなければならないのでしょう。専制君主ならともかく、民主主義はそれぞれが決めなければいけない重荷があるので、それをどうよりよい方向に生かしていくか、行動経済学の今後の成果に期待したいです。

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