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2018年3月の4件の記事

2018.03.30

『RPAの威力』

なんだか流行している「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)の三文字。バズワードっぽい雰囲気もしますが、ミニマムに業務効率を向上させるにはいいツールなのかもしれないとも思いつつ、本書をダウンロードしました。

本書はシステム導入コンサルティング会社が書いたもので、基本的にRPAツール導入支援サービスの紹介といったものに感じます。無料で配布したらいいのにって思うくらい。(見込客にはきっと無料で配りまくっているに違いないと思いません?)

RPAは各現場のPC業務の自動化なので
(1) ユーザ部門がロボットを各々作りこむ
(2) 情報システム部がロボットを設計し現場に適用する
の2通りの導入アプローチがあります。これが曲者で、(1)だと野良ロボットが大量に出没して手に負えなくなる、(2)だと結局のところウォーターフォール的な手続きが発生し稼動までに時間がかかり、変更の柔軟性も失われます。これって、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング…業務で謎マクロが動いていたりしませんか?)の是非を議論していたときと同じ構図ですね。そう、結局RPAってアプリ跨ぎのEUCなんじゃないの?って思ってしまいました。

本書では情報システム部や現場部門の理解と「素晴らしい」スキルによってこんなに立派な成果が出ました!と好事例をさらによく脚色して書かれているように思うのですが、事例に挙げられたロボットたちが導入時の担当者が出て行ってしまった後にどのように動くのか、気になるところです。

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2018.03.21

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』
AIブームの中、AIとはあまり関係のないように思える「教科書を読めない子どもたち」という言葉が新聞広告に掲載されていて、気になりました。

この新聞広告には、こんな例題が載っていました。

次の文を読みなさい。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性のAlexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は(    )である。
①Alex  ②Alexander ③男性 ④女性

この文章、比較的論理的に複雑にできており、穴埋め設問が本文に対し不自然ではあります(論理の順序が、本文と設問で逆向けに作ってある)が、解答としては明確に一つしかありません。本書によれば「係り受け」の問題だそうで、AIで解ける種の問題だそうです。この問題の正答率が、中学生の3分の1、高校生の半分しか正答できないということです。(ちなみに、広告を家族に見せたところ、小6の息子は難なく解けましたが、妻は誤答し、正解を言ってもなぜだかをすぐに理解できませんでした。おそらく、小6向け文章読解ドリルと同等の難易度と思われます。)

この広告が気になり続けていたので、本書を読むことに。

本書の前半は、数学者の視点でAIのシンギュラリティは来ないと断言することに割かれています。講演会でシンギュラリティの到達についての質問が多く辟易していることまで書かれています。まあ、マスコミはAIが人間を乗っ取るシンギュラリティがすぐそこまで迫っていると囃し立てているので、自らAIを研究する人でもなければそう思って当然でしょう。質問者が悪いわけではありません。一部のAI専門家はそう煽ることをメシのタネにしていることも事実でしょう。ただ、本書では、数学者の視点から、AIには何ができて何ができないのかを解説しています。本書いわく、コンピュータでできることは計算だけで、計算でできないことはコンピュータでできないのです。そもそも著者は「AIはまだ存在しない」とまで言い切っています。AIの定義にもよりますけど。他の視点からの解釈を見ないままこれを受け入れるのも危険ですが、かなりわかりやすく書かれているかと感じます。蒸気機関や内燃機関が発明されても、人間の営みの全てを代替できたわけではないことと同じような気がします。

そして、後半は、(世間一般が日本の代表的なAIだと思っている)東大ロボくん(コンピュータに入試を解かせ、東大合格レベルまでもっていこうというプロジェクト)の研究によって得た知見から、日本の中高生の読解力を調査した結果についてです。本ブログ冒頭の「Alex問題」も、その考察に用いられた素材です。

自然言語を解釈するのに必要なスキルを、本書では次の6つに分類しています。
・係り受け解析
・照応解決
 ↑ここまではAIで精度よく解釈できるが、↓これ以降はAIで未解決
・同義文判定
・推論
・イメージ同定
・具体例同定
この分類において、日本の中高生や大学生にリーディングスキルテストを行ったというものです。

本書に示されている結果は、衝撃的でした。正直、日本人の多くが、こんな文章すら解釈できないのかという驚きです。しかも、問題文の出展が中高生用の教科書や、中高生向けのニュース記事だというのです。当然、これらは中高生が理解してくれることを目的として書かれていているもので、本書いわく、これらの文章を理解できないと不利を被るものであるものです。示されているのは、AIですら解釈できることを解釈できない人間が相当数いるという事実です。正直言って、現在の職場でも、文章を理解できない従業員に対し物事を理解してもらわなければいけないケースが多く、苦労することがあります。本書を読んで、腑に落ちてしまった部分がありますね。理解できない人が稀ではなく、大きな割合でいるのです。推論スキルを要求しない文章を作らなけらばいけないとなると気が重いし、複雑なビジネス環境を示す文章でそんな工夫は困難です。

著者はAIが実用化した近未来の社会を想像し「企業は人不足で頭を抱えているのに、社会には失業者が溢れている」という状態を描いていますが、これは現代でも発生している事実があります。論理が入り組んでいる事象を理解出来る人間が少なく、報告を求めても理論的な文章で回答できない人間が多いことは実生活で思い知っています。著者が恐れている近未来は、現場ではもう始まっています。しばらく前までは、こんなことを感じることはありませんでした。それは著者が中教審を批判して「自分の半径5メートル以内にいる優秀な人たちの印象に基づいて絵を描いている」と表現していることと同じだと思います。ビジネスとしては「イノベーションに代替可能なタイプの人の労働価値が急激に下が」るに従いAIに代替する(か労働の対価を相応に減らす)選択をしなければいけないのですが、その前に社会として行うべきことは何かがわからないままというのがもどかしいです。

本書内容とは無関係ですが、Kindleで読んでると所々に無意味な改行が入っています。電子化する作業でしくじっているのかなぁ。

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2018.03.18

『発達障害は最強の武器である』

なぜか突然、有名人の「俺たぶん発達障害」アピール。最近、発達障害が流行ですし。『他人を攻撃せずにはいられない人』で発達障害を徹底的に排除しようとしていた時代とは隔世の感です。

しかし、ネットで発達障害の特徴を調べてみると、あるある的なことばかりで、素直にネットで診断すると発達障害の可能性が高いと言われるのは大抵の人が当てはまるのでは?と思います。特にIT系で働いている人間なんて、いわゆるマトモなんていないだろとか思います。そんな素人診断でわぞわざ本を出さなくってもって思うんですが、精神科医(と言っても和田秀樹や香山リカですが)が肯定しているんだから、そんなものか。

一昔前は、異端児こそが世界を切り拓くような感じだったのですが、昨今は社会に適応できず困ってる人も、トンがって成功を収める人も、同じカテゴリーなんですね。これじゃ本当に困ってる人に救いが差し伸べられないような気がします。


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2018.03.17

『なぜアマゾンは今日中にモノが届くのか』

アマゾンの物流戦略の本。…と思って読み始めたのですが、あまり具体的なことは書いてないですね。

アマゾンは徹底的にお客様のことを考えて戦略的に物流に投資しています。ってのが延々と書いてある。顧客満足のために資金と知恵をふんだんに使ってますよという、アマゾンのアピールなわけで。

ただ、この本を読んでわかるのは、アマゾンは正解だけを選んで成長してきたのではなく、試行錯誤し、失敗を積み重ねて今の成功があるんだということ。(この部分は本書ではそんなに強調していませんが。) いずれにせよ、大胆な投資と、意味のある失敗によって現在の成功があるんだと思いました。

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