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2018年8月の6件の記事

2018.08.19

『ねむらない樹 Vol.1』


短歌のムック。短歌研究や角川短歌に比べ、若い読者に向けて編集されている雰囲気がする。このあたり、実際の読者層統計を見てみたいものだ。

特集は「現代短歌100」と「ニューウェーブ30年」

現代短歌100は、2001年以降の短歌から若手歌人が100首を選ぶという企画。採られているのは、プロ歌人から「短歌ください」に乗っているような素人の歌まで幅広い。カタカナも多く、現代だなあという印象。様々な歌が取り寄せられており、感覚もマチマチで次々に読むと雑多な感じがする。とは言っても、後半の若手歌人の作品それぞれ15首のような作品の読み方がまだわからず、アンソロジーがいいのか歌集がいいのか、まだ分からないなぁという感じ。100首セレクトでは、ここ1ヶ月ほどの短歌の勉強で読んだことがあるなと思うものもあり、有名な短歌はどこでも有名なんだなと。

ニューウェーブ。短歌界全体に漂った時代ではなく、萩原裕幸、加藤治郎、西田政史、穂村弘の4人のことを限定して言うんだと。東直子のような女流歌人は同時代に同じテイストで短歌を詠んでもニューウェーブではない。このへんは定義の問題だからまあいいとして、今後の短歌史にニューウェーブとそれ以降がどう塗り分けられていくんだろうか興味がある。特にここ数年の作品は「ニューウェーブ」よりもさらに挑戦的な短歌が読まれていて、正直読みづらいなと素人でも思う歌まであるのだが、それらが今後の短歌でどう位置付けられていくのだろうか。

書評欄が角川短歌に比べて軽く書かれていてよい。短歌の歌集はまだ買ったことがないけれど、角川短歌の書評のように重く捉えながら短歌を読み続けるのは骨が折れるだろうなと。ねむらない樹の書評の感覚で歌集は読みたいものだ。

このムック、いったいどれくらいの頻度で出版するつもりなんだろう。ここには2019年1月に次号を発行するつもりでいるみたいに書いてある。

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2018.08.17

『考える短歌』


短歌入門系の本。Amazonの説明やレビューを読んで短歌の作り方を一から説明しているものだと思って読み始めたら、そうじゃなかった。この本も推敲ノウハウ本でした。でも、短歌を投稿するとかまでやるんだったら、かなり実践的なノウハウ本。

目次を追ってみる。

・「も」があったら疑ってみよう
・句切れを入れてみよう
・思い切って構造改革をしよう
・動詞が四つ以上あったら考えよう
・体言止めは一つだけにしよう
・副詞には頼らないでおこう
・数字を効果的に使おう
・比喩に統一感を持たせよう
・現在形を活用しよう
・あいまいな「の」に気をつけよう
・初句を印象的にしよう
・色彩をとりいれてみよう
・固有名詞を活用しよう
・主観的な形容詞は避けよう
・会話体を活用しよう

目次を抜いただけだが、この本に述べられている短歌ノウハウは以上である。投稿歌に対しそれぞれのノウハウを用いてダメ出しをし、短歌を改善するという作業をやっている。まさに推敲ノウハウ。

本書を含め短歌の本を読んで気になるのが、例えば「連用形」なんて用語を理解できないと、書いてある内容が理解できないこと。そんなの中学高校の国語で確かに習ったけど、全く知らなくても問題なく社会生活を送れて来たやんってやつである。ツラい。

まあいい、もう少し短歌を勉強すると日本語の文法を学ぶことになり、もう少しマシな日本語を書いたり話したりできそうな気がしてきた。

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2018.08.14

『角川短歌』を読んでみた



短歌のKindle本を読み短歌って何か面白いんじゃない?と、少し短歌を追ってます。『現代秀歌』に引き続き『近代秀歌』も読み出したり、『国語便覧』を見だしたり。

そんななか、やっぱり短歌の世界を知るには雑誌じゃないか?(例えば自転車なら「サイスポ」、将棋なら「将棋世界」)と思い、調べる。一般書店で手に入りやすい短歌雑誌は「短歌」(一般的に「角川短歌」と呼ばれるらしい)と「短歌研究」の2誌らしい。コーチャンフォーで文芸雑誌のコーナーに行き、2誌を見比べた上で一見さんお断り感が低めの「角川短歌」を購入。

当然、この雑誌は入門書ではなく、短歌をある程度やってる人のためのもの。読むための前提条件なんて僕はこれっぽっちも満たしていない。それでもまあ読み進めることはできる。棋譜を読めないと観戦記を理解できない将棋とは異なり、扱ってるのは日本語だということと、古典短歌は中高生の頃の国語の時間に習ってることが大きいだろう。

プロの作品紹介と、作歌のノウハウコーナー、特集、読者の投稿コーナーが主な構成か。プロ作品は美しいなというものもあれば、なんでこんなこと短歌にしてるの?醜いし、というのもある。社会批判を謳う短歌はなんだか苦手だなという僕の好みもわかってきたし。(そんなのTwitterやってりゃわかるだろってのはあるけど。)

作歌ノウハウは、今月号(8月号)は推敲について。系統立てて特集しているわけではなく、いろんな歌人が2ページずつてんでバラバラに書いている。統一感なし。これも系統立てて勉強したことがある人が、さらにちょっとずつ上手くなっていくための記事だ。

結社「心の花」の特集が面白い。結社がどんな雰囲気の所かも知らずにこの特集を読んでるのも僕ぐらいだろうが。ちなみに結社とは、短歌を趣味にする人を数十人〜数百人募集して会員にし、短歌を投稿してもらって掲載する雑誌形式の組織。「先生」の評や添削があるのが「結社」で、先生がいないのが「同人」というらしい。国語の教科書で「明星」たか「アララギ」とか目にしたことがあるかもしれないが、あれである。

全体を通して感じたのが、短歌の世界は面倒くさそうな世界だということ。しかし、将棋のように対局相手がいるわけでなく、基本的に独りの世界である。将棋道場にいてもその一局は対局者相手だし、結社に属しててもその歌は独りで作るもの。(自転車だってペダルを踏むのは自分以外にいないけど。)

だけど、なんか、もうちょっとだけ短歌の世界を覗いてみようかなと思ってる自分がいる。


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『インクレディブル・ファミリー』


娘が観たいと言ったので連れてった。たぶん前作を地上波で観たのだろう。

息を潜めていた「スーパーヒーロー」な家族が大活躍する、ただそれだけのストーリー。スーパーヒーローは生まれながらにスーパーヒーローであり、でも家族を持つ人間。その人間味のところと、スーパーヒーローらしいとんでもない(incredibleな)アクションとの組み合わせ加減がよく、2時間たっぷり楽しめました。

家庭においては無能だという父親像の描き方がコミカルで、子どもたちに共感を得られるんだろうか。大人が見ても、スーパーヒーローなのにこんなことに悩むのかよって言う楽しさを味わうことができる。そんな家庭的ドラマの部分もアクション要素を適宜入れてきてて、さすがよく練った構成である。

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2018.08.10

『すごい物流戦略』



物流系学者で有名な角井亮一氏の本だが、物流に力を入れている成功企業の事業を紹介しているだけで、物流戦略の中味が語られていない。この本を鵜呑みにすると、物流に投資さえすれば売れる!みたいになりかねない。

物流な本腰を入れて好業績を得た企業は、その戦略を語らないものなんだろうか。角井氏が取材しても、オフレコが多いんだろうか。

かなり残念な本になってしまっている。

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2018.08.05

『現代秀歌』



短歌アンソロジー。前作『近代短歌』の続編とある。前説で昭和20年代後半の「前衛短歌運動」が短歌史の一つの区切りではあるそうだが、本書は厳格にその区切りを用いることなく単純に近代短歌以降の歌人の作品が紹介されている。

短歌の作法も、読み方も知らずただ文字を眺めるだけであるが、たった三十一文字の多様性、重み、深さを100人分感じることができる。職業歌人としてコピーライター的に「上手い」表現を書き留める歌人もいれば、苦しい生活の暗さと微かな明るさを三十一文字に歌った者もいる。昭和から平成の時間は長く、歌われる情景は様々であり、短歌ゆえに読者に時間の情景を埋める力が試される。

短歌なんてブルジョワかインテリ高齢者の遊びかと思っていたが、プロレタリア短歌のような世界もあり、広くたくさんの人が楽しむべき文学ジャンルのような気がしてきた。もう少しいろんな短歌に触れたあと、もう一度ここに帰ってきて読み返すべきアンソロジーではないだろうか。



この本、あとがきに著者の妻であり歌人の河野裕子が詠まれている。

一日が過ぎれば一日減ってゆくきみとの時間 もうすぐ夏至だ (永田和宏)

河野裕子は闘病中であり、のちに亡くなる。妻の死を詠んだ歌。章立ての最後を「病と死」とし、あとがきにこの歌を記すことで、淡々と歌を並べたのではない著者の思いが残される。

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