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2018.10.19

『世界史の中の戦国日本』


日本では室町時代後期から戦国時代である16世紀における、日本周辺の貿易状況について書かれた本。新書ベースなので読み物かと思って読み始めたら、けっこう資料の解説の部分が多かった。資料から読み取れる隣国関係の記述はあるが、そこからストーリーに展開する流れにはなってない。(後から見ればそこ本の原著が1995年に出版されており、近年の歴史ブームの中での本ではないことがわかったが。)

タイトルに「世界史」とあるが、欧州や中東の記述はそれほどなく、マラッカ、琉球、蝦夷地、朝鮮という日本周辺との貿易が中世から近世への時代の変わり目にどう変化したかに焦点が絞られている。この本から、東アジア貿易の変遷が近世日本経済にどう影響を及ぼしたか、日本の戦乱が東アジア経済にどう影響を及ぼしたかは僕の読解力では理解できない。

それでも石見銀山の銀が東アジア経済に及ぼした影響は興味深かった。急激な日本の銀産出量増大が朝鮮の経済を混乱させ、女真族(満州民族)の蓄財に至った可能性があるなんて思ってもみなかった。金銀レートは幕末まで混乱が続くけど、こういう通貨の関連は方程式にしようにも変数が多すぎてワヤですね。

中世の東アジア貿易体系で非常に重要な役割を担った倭寇も、日本の教科書では単なる海賊集団なような。教科書の記述では軽視していたことが、複数の歴史を繋ぐ中でかなり大切なのだろうし、そういう重要なニッチ部分を知ることができた本ですね。

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