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2019年4月の5件の記事

2019.04.30

『FACTFULNESS』

世界の人々の衛生状態や経済状況がどのようなものか、わかりやすいデータを用いながら説明してくれる本です。

正直、先進国以外の地域では衛生状態はひどく、過酷な生存競争を強いられているのだと思ってました。たぶん小学校の地理の授業や「100人の村」あたりの知識から時計が進んでなかったようです。これは先進国の他のいろんなアンケートでも同じようで、各質問はランダムよりも(チンパンジーが選ぶよりも)悪い結果になるありさま。本当は、発展途上国の衛生状態は僕が思ってるより格段に良く、経済状態もいいのです。たぶん、発展途上国の「ふつう」は、私の父母が生まれた戦後くらいのレベルには達してるのではないかと思います。

世界の現状に関する知識をアップデートしてくれる良書。たまにはこういうアップデートが必要です。

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『東京貧困女子 彼女たちはなぜ躓いたのか』


貧困生活を送る女性へのインタビューを書籍に構成したもの。本は東洋経済ONLINEの1コーナーのWeb記事である。

イメージ的には、SPA!がよくやってるキワモノ生活記事みたいなものである。経済誌である東洋経済がなぜこんなゲスいネタに手を出したのかはなぜか。Web記事はキャッチーなタイトルでページビューを稼ぐことが望まれるので、経済誌と言えども背に腹はかえられぬか。

で、内容。シングルマザーだったり介護離職だったり精神疾患だったりで正規雇用から外れ非正規雇用の不安定な生活になってしまっている女性たちの現状を描く。こういう弱者が放置されるような社会でないと思ってたのに、現実はこれか。

本書は女性という縛りで取材をしているが、女性特有の事情は
・シングルマザー→貧困の道の罠
・風俗という罠
・親の介護という罠
・教育投資効果が低く見られる罠
あたりだろうか。本書の前半は貧困で風俗の仕事を始め精神状態を悪くしてさらに貧困という目も当てられない事例が語られて、つらい。

本書で熱く語られるのが、教育である。特に貸付型の奨学金を敵視している。アメリカほどではないが、日本でも奨学金の返済が重くなる事例が増えてくるんだろうか。そこそこの大学を出ても運良く正規雇用の道に進めるとは限らないのだし、厳しい世の中である。ただ、奨学金のリスケと社会福祉制度は理解しとくことで何とかなるかもしれない。

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2019.04.27

『芳華』


中国の文化革命期の軍歌謡団の団員の青春群像劇。一言で言うと、これだけである。

70年代中国に似つかわしくない美しい青春描写。団員のイジメや出自に関わる話をスパイスとして取り入れながらも、ただ美しく青春描画を流す。ダンス、プール、女子寮。文革という暗い時代を匂わせながらも、映像は美しい。

軍の規律を練習や公演に取り入れることで、中盤シーンにつなげていく。

中盤の展開からの終盤。群像に表れる微妙な人生に重さを与える。

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2019.04.18

『父が娘に語る美しく、深く、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

ギリシャ元経済相が書いた経済本。高校生にもわかる〜系かなと手に取りましたが(実際にはKindleにダウンロードだけど)、中身は経済格差についての筆者の思うところを書き連ねている本でした。

主な論点は、(1)通貨の統制について (2)市場の統制について でしょうか。

通貨の話でギョッとしたのが、筆者がこの本で、銀行や中央銀行はやお金を「どこからともなくパッと出す」と表現しているところです。まあ借主の通帳の残高を増やすのは通帳に書けばいいだけなので、そうなんでしょうけど、それってあまりに偏った思想でありピュアな「娘」に説明すべきことじゃないでしょ。この人、ギリシャ危機に際しても、どこからともなくパッとドラクマを出したかったんじゃないの?って考えると怖いんだけど。(本当にパッと出しちゃってるアベノミクスと黒田マジックはどうするのか知らないけど。)

ゆきすぎた市場化が富裕層と貧困層を隔絶しているという主張は、労働の価値をけっこう雑に扱ってるからどうかなぁと感じます。経済学者のことなので研究室では納得のいくまで計算して、一般書にはそんな計算を書く必要がないので雑に見えるようにしか書いてないんでしょうけど。

かなり極端な論調ではあるものの、通貨と市場について考えるきっかけになるいい本だと思います。娘には勧めないですけどね。


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「ROMA」

NETFLIXが制作した作品。70年代メキシコという馴染みのない設定、しかもモノクロ、人間ドラマ。展開としては、かなり地味。徹底的に地味な展開を狙っている。 ラテンアメリカの熱狂感、身分による閉塞感。このストーリーに感じる温度感は観客によりまちまちだろうから、あえて作品に色を付けずにモノクロ作品として制作したのだろう。ただ、画面はおとなしいが、メキシコシティの熱狂の雑音が終始流されており、圧倒されながら観ることになる。 NETFLIX配信作品だからといって侮るべからず。 NETFLIXがこの作品をどうしたかったのか。劇場作品として没頭して鑑賞する見かた以外にこの作品を見る方法があるのか?自宅のテレビやタブレットで現実世界に片足突っ込んだままでROMAの世界に浸れるのか?砂浜のシーンはテレビの画面と音声で観て迫力を感じることができるのか?この辺りが納得いかないが、これからの映像コンテンツ配信のあり方の試金石なんだろうな。

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