『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で絶叫した』
ジャーナリストが「底辺」な仕事を経験する体験ルポ。仕事は、アマゾン倉庫、介護、コールセンター、ウーバー。
イギリスの、炭鉱跡のあるような落日感の漂う都市を選び、社会の「ひどさ」を本に記す。ただ、イギリスが過酷な低賃金労働に浸食されているのではなく、東欧の低賃金労働者がイギリスの衰退した都市に集まり、その労働力をアテにした産業もその低賃金労働者を求めて進出してきてるのが実態だろう。イギリスのEU脱退騒ぎはもう何年も前の話だったが、イギリスの労働者はEUのせいで東欧低賃金労働者の国になってしまったと、離脱に票を入れたのだろうか。
本書はイデオロギー色が強く、素直には読めなかった。週給をちょろまかすエージェント(派遣業者)固有の問題が、まるでアマゾンの問題かのように書かれている。汚いところには自分で手を付けずに巧みに動くアマゾンと、うまくちょろまかそうとする業者、それでも働かなければならない低賃金労働者という構図が、著者の書き方のせいで歪んで見える。
本書の複数箇所で問題提起されている「ゼロ時間契約」に労働者はかなり苦しめられているようだ。労働時間とそれに比例した賃金は雇用主の胸先三寸。これで労働者に安定が来るわけはないよな…この辺りは政策でなんとかしなきゃいけないところ。
ウーバーは出来高だから、ゼロ時間契約より厳しい。好きな仕事だけやればいい気楽なものだと思ってたら、ドライバーが選べるのはアプリのオンオフの時間だけなのね。オンの時に仕事のオファーがあれば、基本的に受けなきゃいけない。自分の都合と出来高の報酬と、アプリをオンオフするたいみんぐの兼ね合いは難しそうだ。
ウーバーは顧客とドライバーを完全競争の世界に引きずり込み、ウーバー自体はネットワーク効果を生かしたプラットフォーマーとして利益を上げる構造なんだなと納得した。完全競争の世界にはまり込んでしまうと、幸せになる未来は見えない。