『むらさきのスカートの女』
近所にいる変わり者として有名なむらさきのスカートの女を観察する、という仕立ての小説。語り手は黄色いカーディガンの女で、この語り手の一人称小説であることがポイント。観察対象であるむらさきのスカートの女の行動は細かく描かれるが、黄色いカーディガンの女のことが描かれず物語が進むので、読んでいてだんだん気持ち悪くなる。それより一体お前は何者なんだと。
本が終わりに近づくにつれ、変わり者なのはむらさきのスカートの女ではなく黄色いカーディガンの女であることに気付いてくる。そうすると、むらさきのスカートの女は実在する人間として描かれているのかというか疑問が生じてくる。『ピクニック』のような妄想が盛り込まれているのではという疑惑が生じたり。
物語の最終盤をどう解釈すればいいのかわからない。このわからなさが今村夏子ワールドなのか。そして『花束のような恋をした』で今村夏子をここまでプッシュする意図は何だったのか。
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