『骸骨ビルの庭』
戦後混乱期の私設孤児院という、かなり重いテーマ。宮本輝はこういう重いテーマを投げかけてくる。
十三という土地柄の選択、戦後混乱期を戦後気分もなくなった平成6年に振り返るという手法、いかがわしい多様な登場人物によるグランドホテル形式での物語構成、100点満点のハッピーエンドにしない終結。これが宮本輝だと言えばそれまでだが、宮本作品の中でも重量級の作品だと感じた。
物語当初は40代後半でリストラ退職した主人公八木沢の重さを語る小説だと思ったが、そんなことはどうでもよくなってくるというか…八木沢は骸骨ビルにやってきて、住民たちに敵視されているのか仲間だと思われているのか。本書を通して見極めるのは難しいと思ったが、八木沢自身もその位置を図りかねているのだろう。八木沢の立ち位置にハラハラしながら読み進めるのがこの小説の醍醐味にも感じる。宮本輝ならではの絶妙さを味わえた。