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2023.06.25

『あの胸が岬のように遠かった』

歌人永田和宏による、妻で歌人の河野裕子の懐古録。永田の幼少期の境遇の説明と、河野との恋愛期間の懐古がメイン。

永田の院試不合格による二人の不安定がクライマックスか。乗り越えたというか、乗り越えられずに荒波を被ってしまったというか、読んでいる分にはずいぶん荒れてすさんだ時期だったように思うし、実際に二人とも辛く苦しい時間を過ごしたはずだ。それでも、河野は「もういちど生まれて来ても、今日まで生きて来たのと同じ青春を選び取ろう」「このようにしか私には生きられなかった」と第一歌集の後書きに語る。苦しさも含めて、彼女を築き上げた青春なんだろう。永田は、その重さまで引き受けて、河野を見送ったのだろうか。

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