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2023年7月の4件の記事

2023.07.30

『土門拳 古寺を訪ねて』(斑鳩から奈良へ)(奈良西ノ京から室生へ)

4月の東京都写真美術館での土門拳の展覧会を観て、室生寺が気になっていた。7月15日、東海道新幹線と近鉄特急を乗り継いで室生寺を訪問した。真っ赤な翻波式衣文と黄金の白毫が心に残る金堂の釈迦如来、優しく微笑む弥勒堂の弥勒菩薩、青空に聳え立つ五重塔。土門がフィルムに収めたものを自らの眼で確かめることができた。そして、土門はどのような思いで仏像に対面したのか復習したくなり、一冊を人に借り、一冊を古本で取り寄せて読んだ。

本書は土門のエッセイと写真を文庫4冊に編集したもののうち2冊。聖徳太子の霊や鑑真随行者の仕事に思いを馳せるエッセイとともに、旅先で出会う人との会話も盛り込まれている。特に室生の人々との交流は深かったよう。土門は室生の人々の気持ちも境内写真に収めたのだろう。そんなことを思った、エッセイと写真の文庫本だった。

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『我が友、スミス』

スミスとは筋トレマシンの名前。ジムでのスミスマシンの席取りあたりから物語は始まるが、話はどんどんストイックになっていく。淡々と描かれているので、ストイックさがなんでもないように思う。よく考えてみると、けっこうな異常人。それを思わせないさらっとした書きっぷりが、かえって面白い。

最大限までストイックさを高めておいて、最後のシーンがやってくる。どうして靴を脱いだか。そこに来るまでに溜まりに溜まっていたものは何だったのか。それは、それまでの物語の中のところどころに埋め込まれている。そして、読者もそのことを若干だけ胸に引っかかりながら読み進めてきたはずだ。

競技に、そして人生に何を求めているのか、ふと振り返りたくなる時がある。

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『冬の花火』

「乳房消失」の歌人、中城ふみ子の伝記的小説。東京で遊学し北海道に戻ってエリートと結婚という順風満帆な人生から一転、夫の汚職、離婚、乳癌への罹患と、次々と悪事が重なる人生。転落する環境において、ふみ子は強烈な個性を発揮し、男を翻弄し、これでもかと人生を貪り食う。自らの先が短いと悟って、より生き急いだようだ。失ったもの、失ってしまうものを生きている間に取り返すように。

中城ふみ子の31年間の人生は、濃く、重い人生であったと感じさせる一冊だった。

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2023.07.04

笄川

東京都渋谷区〜港区を流れる古川(渋谷川)の支流に「笄川」というのがあるのを知った。「こうがいがわ」と読む。笄は麻布の小字でもあった地名。会社帰りに、笄川を歩いてみようと、広尾駅を降りた。

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広尾駅の南側には、天現寺橋交差点が見える。天現寺橋付近が笄川の終点と思われるが、天現寺橋だけでも情報量が多そうなので、またの機会にしよう。

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広尾駅から外苑西通りを北上。少し歩いたところで左に分岐があります。これがたぶん、笄川。

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この脇道の左手は崖地になっていて、聖心女学園のキャンパスになっています。

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 この先には、オマーン・スルタン国の大使館。なんだかかっこいいぜ。

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右手のマンションと道路の境界が若干ウネウネ。河川跡地の雰囲気を醸し出します。

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左からはたくさんの坂が降りてきてます。

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掲示板には、小さく旧地名が書かれています。麻生笄町。

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路地裏には石垣の崖。階段は私有地の中にあるものっぽく、登りきったところの扉が閉まっていました。

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左(笄川の右岸)に「牛坂」という坂があり、そこを降りたところの交差点が「笄橋」です。笄の地名と笄川の河川名は、笄橋から来てるとのこと。

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この先、笄川より少し高いところにある六本木通りを北に渡ります。

六本木通りの北側はこんな感じ。

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右が笄川、左は北坂から根津美術館方面に向かう道です。でも、しばらく並走。なので、こんな場所もあります。

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写真手前が笄川、階段の上が北坂への道です。暗渠化する前は、段違いに水路が流れたいたんだろうか?

さらに登ると、左手(右岸)に青山霊園立川墓地が当たります。

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この先、青山陸橋の手前にある笄児童遊園の標高が19m。広尾駅が10mなので、けっこう登ってきたことがわかります。

青山陸橋をくぐってさらに上流へ。

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いかにも河川跡地らしい曲線にうっとりしながら歩きます。

リビエラ南青山というビルが、外苑西通り側の谷戸を詰めた場所のようです。

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外苑西通りの東側に回ってみます。大通りから大きく下り坂になってる道が、河川跡の道。外苑西通りを青山通りに接続するために、大通りの路面を上げたと推測できます。

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この道にはポチポチ通りという名前が付けられているよう。ポチポチ。

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ポチポチ通りの東側に墓地を持つ梅窓印という寺院の北隣のセイザンⅠというビルが、笄川の谷戸奥のようです。

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この坂を登ったら、外苑前駅。

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今日もお疲れさまでした。

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