『古寺を訪ねて 京・洛北から宇治へ』
土門拳の写真とエッセイを文庫に編集した本。この巻は、京都・宇治を集めている。
エッセイから、土門が撮ろうとしているものを窺い知ることができる。空間、時間。過去の僧侶や庭師が、数百年前にここにいたという空間を、現代の写真で切り取ろうとしている。明恵上人の修行の場所、夢窓国師が作った庭、千利休が座った部屋。刹那の画角を切り取るだけにすぎない写真に、時間と空間を乗せる。だからこその、素材の切り取り方なんだと思う。土門の写真の迫力は、そこから来るのかと。
この本を読みながら東海道新幹線に乗り、東寺観智院を訪ねた。この本を読まなければ簀子縁の平あたま角足手打ちの釘など気にすることもなかっただろう。確りと足裏で味わってきた。
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