« はるひ野やまざくらポケットパーク | トップページ | 『或る「小倉日記」伝』 »

2024.05.25

『東京湾景』

2022年の10ヶ月間、芝浦埠頭の先の大田市場に通っていた。帰路、天王洲アイルから缶ビール片手に品川駅港南口まで歩くようなことも、よくやっていた。2023年からは晴海に通っている。事務所から少し歩くと、豊洲や台場が見える運河がある。ここしばらく、東京湾に縁がある。その東京湾を描いた小説に接した。概ねの舞台は品川駅港南口から品川埠頭あたりの港湾である。対岸の台場とは、世界が違って見える。大田市場と晴海のごとく。台場と品川埠頭はたった1キロ。なのに、印象としてとても遠く感じる。台場の会社員は、品川埠頭の労働者と住む世界が違うのだ。


違う世界に住むもの同士の接触は、匿名が似合う。そんな印象を涼子に受ける。港湾労働者の世界に、身体は飛び込んでも精神までは飛び込めないのだ。その、小さな(そして増幅していく)躊躇を、読者の胸を痛くするように著者は描いてくる。


美緒の一夜限りの不倫、亮介の教師との同棲。いずれもほんの少しイレギュラーな恋愛の形態である。何を隠した何を曝け出すか。恋愛というのは、そんな駆け引きなのか。

Img_8391

|

« はるひ野やまざくらポケットパーク | トップページ | 『或る「小倉日記」伝』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« はるひ野やまざくらポケットパーク | トップページ | 『或る「小倉日記」伝』 »