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2024年6月の4件の記事

2024.06.25

『人生相談を哲学する』

日経木曜夕刊の明日への話題を連載している哲学者、森岡正博氏。反出生主義のエッセーなどが面白く、著書を手に取りました。

本書は朝日新聞の人生相談投稿コーナーの著者自身の回答を振り返り、さらに深く考察を加えることに挑戦している本です。


個々の相談は置いておいて、その深い回答から、いくつか考えさせられることがありました。


■ 愛

本書には「好き」の概念が登場しませんが、少し前から愛してるのと好きとの違いって何だろうと疑問に思っていました。本書で愛について触れられていたので、それをヒントに愛と好きの違いを僕なりに解釈。

愛:対象に幸せになってほしいと思うこと

好き:対象を手に入れたいと思うこと

このような解釈はどうでしょうか。違うという意見もたくさんありそうですが、現時点での僕の解釈です。ただし愛してるのは複雑な概念で、「自らの手によって」対象に幸せになってほしいというエゴイスティックな感情を持つことが多々あるのではないでしょうか。そうなると愛は暴力的な要素もはらんできます。自己中心的にならない愛の気持ちを持ちたいですね。


■ 嫉妬


自慢をすることはよくないこと。よく言われることだけど、つい。このことの本質はどこにあるんだろうと考えたとき「比較」という言葉が思い浮かびます。ネットでは、幸せになるためには他人と比較しないことみたいな感じで語られることもある「比較」です。


(1) 喜びを味わいたい

(2) 自分が優位であることの主張(マウント)

自慢の目的はこの2つでしょうか。(1)はよい自慢、(2)は悪い自慢に感じます。この差はどこにあるのか。なかなか難しいところですが、まずはマウントを取ることを戒めるところからでしょうか。


■ 手段


他人を自分の目的を達成するための手段として使わない。カントの有名な言葉らしく、どうやら高校倫理の教科書にあるものらしいです。この概念を知らなかったことは恥ずかしい。これが社会のルールであるなら、今までの生き方を悔い改めなければならない。過ぎ去ったことはともかく、これから先は肝に銘じて。自分の人生に関わる人に対し、ちゃんと愛を持って接することを心掛けることが大切なようだと学びました。


「哲学」という仰々しい分野の本書ですが、世間で生きていくための心構えを学ぶ本でした。思いもしない人生相談に、いい答えをしていただきました。

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2024.06.18

『星の子』

 いわゆる「宗教二世」である中学生が、生きづらいながらも家族とともに生きてゆく物語。


宗教にはまっている両親との距離感、宗教に対して白い目で見ている世間との距離感。主人公ちひろの宗教への思いを描かないまま、宗教に関わる周辺の出来事のみを無表情に描く文体が不気味である。今村夏子の悪意であり、醍醐味でもあるのだろう。


周囲から見て、明らかに不遇な状況を描く。主人公がその状況を不遇だと思ってるのか否か、作品中で答えを出さないところが悪意。何を正解として読めばいいか、まったくわからない。幸福にも不幸にも正解はないのだ。


読者は、友人や先生が主人公を救ってくれと祈りながら読み進める。しかし、そんなものは救いにならないのだ。学校生活を全否定された主人公の感想は「片思いは終わった」と、ずれにずれまくっている。最初から救いなんか求めていないんだと、はっとする。


この小説の終わり方がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかもわからず、モヤモヤとしながらの読了となった。今村夏子の思惑通りにはまってしまっているのだろう。

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2024.06.16

荻窪

荻窪で歌林の会の東京歌会が開催されるので、その前に荻窪辺りを少し散策しました。

荻窪駅の少し南側を歩こうと思ったので、中央線荻窪駅まで行くのではなく、千歳烏山駅からバスに乗ることにしました。関東バス荻58系統という初めて乗るバスです。途中上高井戸一丁目から井の頭線高井戸駅までは環状8号線を通りますが、それ以外は狭い道路をかなり頑張って走ってるイメージです。

▼ 関東バス
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降りたのは荻窪二丁目。住宅街の中のバス停です。ここで降りた理由は地図アプリでこの歩道を見つけたから。

▼ 暗渠通路
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明らかに暗渠上の歩道なのですが、ここまで狭い水路をきちんと歩道として維持しているのが珍しいなと思います。歩いて行くと、水路合流地点だなあという場所もありました。

▼ 水路合流地点
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遠くには丘の上の建物的なものも見えますね。右側の工事中の部分は電源開発(J-POWER)の社宅跡地です。

▼工事現場横の暗渠通路からの遠景
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そのうち善福寺川にでます。橋の下にそこそこ大きな排水管があり、橋がかかるような道路も暗渠なんだなというのがわかります。

▼ 橋の下の排水管
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善福寺川から少し入ったところに工事中の公園があります。荻外荘(てきがいそう)という近衛文麿の旧宅。2024年12月を目標に復原工事が進行中です。

▼ 荻外荘の工事現場
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さらに住宅街を中に入っていったところ、少し斜面になっているところに「角川庭園」があります。こちらは角川書店創始者の角川源義の旧宅。杉並区の公園として開放されています。

▼ 前庭から旧邸
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▼ 芝生にネジバナです。手入れがよく行き届いているきれいな庭園です。
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▼ 書斎から庭園を望む
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ランチは近くのお蕎麦屋さん「玉川」で親子丼セット。ここは飲み屋としての性質のほうが強いでしょうか。お昼11時半頃でしたが、隣のテーブルでは飲み会をやっていました。

▼ 親子丼セット
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お昼ご飯を食べたあとは「大田黒公園」へ。音楽評論家の大田黒元雄氏の旧邸が杉並区の公園として開放されています。9000平米ほどの大きな屋敷跡地です。庭園内に高低があり、池泉回遊式庭園として立派に整備されています。たまに芝生開放があるようです。

▼ 入口のイチョウ並木
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▼ 園内の小川
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▼ 離れの洋館
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▼ 洋館の中からの景色
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大田黒公園を出て荻窪駅を目指しますが、またもや暗渠通路がありました。ここを歩いてみることに。塀から樹木が飛び出ていたり、なかなか味わい深い暗渠通路です。
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荻窪駅前に出てきました。歩道に設置してあるトランスボックスに俳句が。杉並区ちょっと頑張っているみたい。

▼ 俳句トランスボックス
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線路を超えて、北口側に出てきました。目的地に近づいたので、今日はこれまでです。歌会、がんばりましょう。

▼ 荻窪駅北口の光景
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2024.06.11

『或る「小倉日記」伝』

松本清張はミステリー作家として認識していたが、初期は文学小説を書いていたと知った。しかも『或る「小倉日記」伝』は芥川賞受賞作。


Kindleで買った本は短編集で、下記の短編小説が収められている。

・或る「小倉日記」伝

・父系の指

・菊枕

・笛壺

・石の骨

・断碑


どの作品も、主人公は真剣に一途だし、並ならぬ努力を重ねるが、孤独で残酷な物語である。一途なゆえに視野が狭くなり、自分や家族を追い込んでゆく人生を描いている。妥協を許さないがゆえに、不幸に嵌っているとも言えよう。


不幸な短編小説を読んで、自分は安全地帯にいて大丈夫だ、よかったという感想もあろう。しかし、この自分の安全は様々な妥協の結果だとも言える。まっすぐ不幸に突き進む主人公たちの潔さは、僕にはない。

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