『星の子』
いわゆる「宗教二世」である中学生が、生きづらいながらも家族とともに生きてゆく物語。
宗教にはまっている両親との距離感、宗教に対して白い目で見ている世間との距離感。主人公ちひろの宗教への思いを描かないまま、宗教に関わる周辺の出来事のみを無表情に描く文体が不気味である。今村夏子の悪意であり、醍醐味でもあるのだろう。
周囲から見て、明らかに不遇な状況を描く。主人公がその状況を不遇だと思ってるのか否か、作品中で答えを出さないところが悪意。何を正解として読めばいいか、まったくわからない。幸福にも不幸にも正解はないのだ。
読者は、友人や先生が主人公を救ってくれと祈りながら読み進める。しかし、そんなものは救いにならないのだ。学校生活を全否定された主人公の感想は「片思いは終わった」と、ずれにずれまくっている。最初から救いなんか求めていないんだと、はっとする。
この小説の終わり方がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかもわからず、モヤモヤとしながらの読了となった。今村夏子の思惑通りにはまってしまっているのだろう。
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