『或る「小倉日記」伝』
松本清張はミステリー作家として認識していたが、初期は文学小説を書いていたと知った。しかも『或る「小倉日記」伝』は芥川賞受賞作。
Kindleで買った本は短編集で、下記の短編小説が収められている。
・或る「小倉日記」伝
・父系の指
・菊枕
・笛壺
・石の骨
・断碑
どの作品も、主人公は真剣に一途だし、並ならぬ努力を重ねるが、孤独で残酷な物語である。一途なゆえに視野が狭くなり、自分や家族を追い込んでゆく人生を描いている。妥協を許さないがゆえに、不幸に嵌っているとも言えよう。
不幸な短編小説を読んで、自分は安全地帯にいて大丈夫だ、よかったという感想もあろう。しかし、この自分の安全は様々な妥協の結果だとも言える。まっすぐ不幸に突き進む主人公たちの潔さは、僕にはない。
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