『燕は戻ってこない』
たまたまテレビのチャンネルを回した時にドラマをやっていた。代理母の話。衝撃的な内容で、前後のストーリーを全く知らないまま10分くらい見入ってしまった。ドラマのタイトルと原作がわかったので、きちんと読もうと手に取りました。
子が産めない妻と、子を持ちたい夫。年齢的に今のうちに子を持たないと育てられない焦り、母からのプレッシャー。この裏に隠れ見える夫婦の生まれ育ちの格差。さらに、代理母に手を挙げる貧しい女性。いまだ人間は身分の元で生きているのか。
家系に卑下する妻も、代理母から見たら圧倒的強者である。妻の立場を間に置くことで、代理母の立場を弱く描いている。しかし、この代理母も何か特別貧しい女性ではなく、ありがちな地方出身者でしかない。友人が風俗で働くのを軽蔑する女性なのだ。それでも、目の前に絶望して、自分の身体を金に変える「ビジネス」に委ねてしまうのだ。
金と引き換えに心を失ってゆく描写が恐ろしい。金で解決しようとした依頼者夫婦の描写も恐ろしい。やはり「人間」そのものを売買してはならない。金銭が人間を支配しては行けない。重い小説だった。
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