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2025年5月の5件の記事

2025.05.26

原田ひ香『喫茶おじさん』

あなたは何もわかっていない。そうやって終わる章が多い。会社では出世街道に乗ることができず、早期退職に手を挙げて行先がなくなり、退職金で喫茶店を始めるもうまくいかず閉店してしまう。なかなか思い通りにいかない、しがない中年を描きます。自分では、残念な人生と思っていても、周りからは恵まれている、うらやましいと思われてしまう、そんな地味な人生を送るおじさんです。

途中でそのことに気づき、だからといってやっぱりぱっとはできないおじさんですが、やっぱり豊かなんですよね、何かが。作中に出てくる喫茶店の美味しそうな食事のように。

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小学館サイト

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朝倉かすみ『平場の月』


オーディオブックで聴いた本です。互いに結婚歴がある中学校同級生の50代男女の再開。50代となると、それぞれの人生に色んな事情が積み重なっていて、若い男女の恋愛とは事情が違います。中年の恋愛の描写を見て、若いってピュアだよなと感じます。しかし、年を重ねてから見る恋愛も、その重さゆえ見ごたえがあります。若いと失敗しても次がありますが、中高年には失敗は重くのしかかってくるのです。その「重さ」を、より重いシチュエーションを用いて作り込まれている作品だと思います。
若い頃の恋愛は単に恋愛だけど、中高年の恋愛には生活や相互扶助みたいなのがついて回って、もはや真っ直ぐには受け止められないですね。過去まで含めた自分を恋愛相手にぶつけてしまうのは、あまりに難しすぎます。Image_20250526180301

光文社サイト

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2025.05.21

高瀬隼子『新しい恋愛』

高瀬隼子の短編集。恋愛を義務教育化する近未来を描いた表題作ほか、少しずれた恋愛を気持ち悪く丁寧にきれいに描く。恋愛への執着というか、不幸を呼ぶ恋愛が好きというか、不思議な感覚に囚われてしまう。高瀬隼子は読者の恋愛観を試しているのだろうか。そして、読者の恋愛観を皮肉って話が終わってしまう、裏切られ感。作者にボコボコにされたい方、ぜひ本書を開いてみてください。
講談社サイト
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2025.05.10

『失敗は予測できる』

いわゆる失敗学。技術系の事故・不良品に対する原因分析と対策立案のための指南書です。類書は多く出ており、過去にも何度か読んだことがあるような。2007年出版の本なのでだいぶ枯れているということもあります。それでも、失敗の累計は変わらず、枯れてこそ学ぶことが多いと感じます。失敗の累計を暗記することは難しいですが、こういう本を定期的に読んで思い出すことで、現場でのヒヤリハットをきちんとキャッチし、少しでも適切な対応が取れるようになれればいいなと

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2025.05.02

『瘋癲老人日記』

常時介護が必要な老人の日記の体裁をとっている谷崎潤一郎の小説です。息子の妻である颯子に対するフェティシズムを徐々に増幅させてゆく展開が特異であり印象的です。フェチ欲を満たすための仕掛けが、なかなかに大掛かり。富豪の老人を主人公にしていることで夢の規模が大きくなり、読者をより楽しませる構成になっている。
颯子の魔性の度合いが読みきれないのもこの小説の魅力なのかもしれません。老人が颯子の魔性を読みきれないもどかしさを、読者と共有しているのかもしれません。颯子が主人公の老人をどこまで許容しているのかも読み取れない。告白していいか悩んでいる若者みたいな感覚を老人の日記から感じるのも面白いところです。

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新潮文庫サイト

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