『青い壺』有吉佐和子
偶然のように焼き上がった青磁の経筒。勝ちがあるのかないのか不安定な状態で、人から人へ渡ってゆく。時に愛でられ、時に見捨てられ、時に疎まれて。これは青磁の経筒の壺だけでなく、人生にも言えることではないでしょうか。輝く時もあれば色褪せて埃を被って奥に仕舞い込まれてしまうこともある。青磁の経筒は時折り見出され表舞台に姿を現しますが、人生は一度奥に仕舞われてしまうと、表に現れる機会は訪れません。この小説は、そんな日陰になってしまった人生を冷酷に表現しています。特に、戦後という時代背景を用いて没落する資産家を描いた様子が、いやらしい。このいやらしさが有吉佐和子の文章の醍醐味でもあります。青い壺を通して様々な日陰の残酷な人生の影を有吉佐和子の文章で楽しんでもらいたいです。そして、ハンカチ落としのような青い壺を次に受け取るのは、あなたかもしれない。
| 固定リンク


コメント