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2026.02.23

『滔々と紅』志坂圭

吉原という場所に来る女性がいかに過酷な人生を歩んできたか、吉原という場所でもどれほど過酷な人生を歩んでいるのかが胸に迫ってくる小説です。遊女たちは日々、死と隣り合わせで生きていて、生きていること自体がすでに地獄のよう。その重さを描くために、作者が当時の遊女の生活や制度を丁寧に調べたのだろうということは、作品の細部からしっかりと伝わってきます。歴史的な背景の描写は細かく、吉原の空気がひんやりと肌に触れるような臨場感がありました。
ただ、その綿密さが必ずしも物語の魅力に結びついていないようにも感じました。説明が前に出すぎてしまう場面では、登場人物の感情がふっと遠ざかってしまい、文学作品としての情緒が薄れてしまうのが少し残念でした。物語の流れよりも知識の提示が優先されているように見える瞬間があり、せっかくの題材が持つ哀しみや切実さが、説明の層に覆われてしまっているように思います。
また、登場人物の役割や配置の重なりが不自然で、物語の構造がやや稚拙に感じられました。印象を深める目的での意図的な重なりなのでしょうが、読み手としては少しわざとらしさが気になり、ストーリーの説得力を弱めてしまっていると受け止めてしまいます。わざとらしい偶然性をいかに排除しつつストーリー性を高めるかについては、さらなる工夫をするために時間を割いてもよかったのではと思います。そうすれば、物語性はより厚くなります。
遊女たちが抱える仕事の辛さ、そこから逃れたいという切実な願い、何かに縋らずにはいられない心の揺らぎ、そして信仰へと逃避していく心理――これらは本来、とても強い文学的テーマです。作品の中でしっかりと描かれている部分です。だからこそ、説明ではなく物語として、もっと胸に迫る形で描かれていたらと、どうしても惜しさが残ってしまいました。
それでも、吉原という世界の暗さと重さを真正面から描こうとした姿勢には、強い意志を感じます。資料性と物語性のあいだで揺れながらも、作者が見つめようとした「地獄の中で生きる女たち」の姿は、読み手に静かな問いを投げかけてくるようでした。もう少し情緒の余白があれば、さらに心に残る作品になったのではないかと感じつつ、読み終えました。

滔々と紅 - ディスカヴァー・トウェンティワン

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