『新生』島崎藤村
姪と関係を持ち子を産ませ、自分はフランスに3年間逃げるという、かなり酷い男の話です。大正時代初期の話であり出身の名家の汚点ともなる事柄を勝手に私小説として発表してしまうという、ペンの刃を自身に向けるようなことも行っていて、そのことも後編には描かれているので、その衝撃は大きなものです。
自らの悪事とその内面を表現していいものか、表現するならどのように表現するのか。この小説のような書き方がベストだったとは言い難いと思います。関係を持った姪として描かれる節子は実在の人物が存在し小説に書かれた関係を実際に持っているわけで、その後の人生の大きな枷となることが想像されます。したこと、書いたこと、どちらをとっても藤村を擁護する要素は見つかりません。それは藤村自身も承知の上で、それでも書くことから逃れられない苦悩も含めて書き綴っていることから、書かれている心情も複雑だし、読後感も複雑になります。
この小説は新聞小説として発表されたとのこと。新聞の小説は娯楽のように思っているのですが、実際の人生を読み手はどのように捉えたのでしょうか。
青空文庫
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