カテゴリー「短歌」の2件の記事

2025.01.13

『雪のうた』

雪にちなんだ短歌のアンソロジー。

雪というのは、不思議。単に気象現象だし、多く降れば生活に支障を来たしたり、事故の原因になったりする。現にこの年末年始の東北日本海側では雪が災害になっています。

それでもなお、雪には幻想的な印象があり、美しいものと捉えます。世界を白に変えてしまう魔法、それが雪ですから。

頰の雪はらいてくれる指先をたとえば愛の温度と思う(俵万智)

雪が冷たいからこそ、指先の体温が際立つ。この体温を信じていいのか、雪に惑わされているだけなのか。雪のせいにして信じてしまえと心に言い聞かせる感情。雪ってこういう魔力がありますね。

遠くの雪国のニュースを見ているだけの我々も、いざこの地に雪が降ったら「ゆひら」と騒ぐのでしょうね。

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ(穂村弘)

左右社サイト

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2025.01.03

『はじめての近現代短歌史』

明治以降現代(2020年代)までの短歌史の本。

第1部で時代ごとに有名な短歌を時代を遡って紹介し、短歌史の見通しをつけてから、第2部の時代ごとの歌壇の特徴を詳説してくれています。


僕が短歌を作り始めてから2年ほど経ちますが、悩んでいるのが短歌にどれほど空想を持ち込むことが許されるかということです。この本で近現代短歌の文脈を理解すると、今の短歌界では虚構に拒否反応を示させるのだろうと悟りました。中年男性が女子高生と偽って作品発表した「事件」、健在の父の死を悼む連作を発表した「事件」への反応を見ても、そういう流れなのでしょう。


この本では、フェミニズムを強く感じます。筆者が女性歌人の地位を非常に気にしている文章です。中立に近現代史を学ぶためには、その点を差し引いて読む必要がありそうです。


前衛短歌以降は筆者の主観も強く入っているように思いますが、それを差し引いても近現代短歌の流れを俯瞰するのにはいい教材だと思います。整理しながらきちんと再読したい本です。


<a href="https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2708.html">草思社サイト</a>

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